親の遺品整理のコツとやり方5ステップ・できない時の対処法

親が亡くなると、精神的につらいばかりでなく、死亡届などの公的手続きや葬儀など様々な負担がかかります。それらの負担の中でも大きいものの一つが、親の遺品整理です。
故人にかかわるすべての物品が遺品となるため、あまりの多さに途方に暮れてしまう方が大半です。遺品整理は旅立った親に対する供養の一つとも言えますから、放置せずきちんと向き合う必要があります。
実は親の遺品整理は親の生活スタイルや相続人の数・期間によって、最適な方法が変わります。
状況と気持ちに合った選択をすると遺品整理の負担は軽くなります。
この記事では、親の遺品整理のやり方や相続面での注意点、遺品整理業者の費用を安く済ませる方法が分かり、揉めることなく遺品整理が進みます。
【監修】遺品整理士協会認定 遺品整理士
片山 万紀子
祖父の遺品整理をきっかけに遺品整理や不用品回収に興味を持ち、遺品整理士協会認定・遺品整理士の資格を取得。ReLIFE(リライフ)のディレクターをする傍ら、年間600件以上の遺品整理に携わる。遺品整理を通して「ありがとう」という言葉をいただけることを仕事のやりがいとしています。
目次
親の遺品整理とは
親の遺した品物や家財などを整理するのが、遺品整理です。
遺品を必要・不要で仕分けして、必要な物は保管し、不要な物は処分や買取、形見分けなどにより手放します。
家の大きさや亡くなった方の生活スタイルにより、遺品の量は2tトラック2台以上の差があるので、必要な時間や遺品整理にかかる費用には差が大きいです。
例えば、田舎の戸建てで一人暮らしをされていた方は、先祖代々続く仏壇や神棚、着物、着物をしまうためのタンスなど大物家具や家電が多いので、遺品整理には時間がかかります。粗大ゴミを処分する費用も増えます。
同居していた家族が亡くなったときには、冷蔵庫や洗濯機を共同で使っていることもあるので、大型家電の処分は必要ないため、時間や手間も比較的少なく済みます。
親が亡くなったその時から全ての持ち物は遺品へと変わり、相続人へと引き継がれるので、親の遺品は責任をもって管理、処分しなければなりません。
親の遺品整理はいつから始める?
遺品整理を行う時期に明確な決まりはありませんが、相続税の申告期限が死後10か月以内であることから、申告期限前に行うのが効率的です。
四十九日や葬儀直後、死後の諸手続きが完了した後、一周忌など、節目となるタイミングから始める方が大半です。
親の遺品整理を急いで行うべきか否かは、同居家族の有無や居住形態により異なります。
いずれの場合でも、相続税の申告期限が死後10か月であることから、相続財産の管理だけは済ませておく必要があります。
同居の場合
子供や配偶者が同居していた場合は、親の死後に空き家にならないので、必ずしも遺品整理を急ぐ必要はありません。1周忌、3回忌などの落ち着いたタイミングで親族を集め、形見分けと同時進行で行うという方法もあります。
子供世代と同居していた時は冷蔵庫や洗濯機、共有していたタオルなどはそのまま使うことが多いので遺品整理の負担も軽くなります。また、テレビや収納家具なども家族が引き継いで使うこともできます。
通帳や貴金属など相続財産にあたるものだけは仕分けし、適切に相続ができるようにしましょう。稀にタンスの奥から現金などが『隠し財産』が出てくることもあります。故人の洋服や写真、本などの遺品整理は急ぐことはありませんが、できれば死後10カ月以内には終えるといいです。
親が1人暮らしだった時
親が一人暮らしだった場合は、家が空き家になってしまうので速やかな遺品整理が必要です。とくに賃貸物件では解約するまで家賃が発生するため、費用を抑えるためにも早々に遺品整理する必要に迫られます。
持ち家の場合は退去期限などがなく、遺品を置きっぱなしできるスペースもあるため、遺品整理が先延ばしになりがちです。しかし、空き家のままで放置すると家の傷みも早くなり倒壊や放火など犯罪に巻き込まれるリスクもあります。
空き家の実家を放置するリスクは【実家が空き家になったらまずやる手続きと費用。管理方法と空き家対策】をご覧ください。
親が事故や突然の病気で亡くなったときには、心が追いついておらず遺品整理が進められないこともあります。どうしても心の整理がつかなければ一時的に保留することも可能ですが、無計画に放置するのは避けます。
遺品整理がつらくて進められない時は【遺品整理がつらい3つの理由と悲しみを乗り越えた方法】をご覧ください。
遺品整理の時期の詳細は【遺品整理の方法や時期~失敗しない3つの注意点と費用相場】をご覧ください。
親の遺品整理の費用
親の遺品を整理するときの費用は、自分たちだけで行うか、遺品整理業者を利用するかで数十万円以上の差があります。
自分で行った時は2万円程度、遺品整理業者に依頼した時は平均的に戸建ての場合20万円以上、ワンルームでも4万円以上はかかります。
自分で親の遺品整理を行う費用
自分たちで行うのであれば、遺品整理にかかる費用は粗大ゴミの処分料金として高くても20,000円程度です。
家具・家電の処分料金
自治体で粗大ゴミとして処分した場合の処分料金は1つあたり500円~2,000円程度なので、タンス、テーブルなど大型の家具が10個あった場合でも5,000円~20,000円となります。自治体によっては、アイロンなど小型の家電製品は不燃ごみとして無料処分でき、粗大ごみもクリーンセンターに自ら持ち込めば50kg未満は無料などとしているケースもあります。
自治体での粗大ごみ処分ルール
粗大ごみの収集日は月に1回程度しかなく、基本的に予約制ですので、申し込みから処分までは早くても1週間~1か月はかかります。また、大型家具を地域ごとに決められた集積所まで自分たちで運ぶ手間もあるので、大人2人以上の人が必要です。
粗大ゴミの排出時間は収集日当日の朝7時から8時までが一般的で、放火や盗難を防ぐために前日の夜に排出することを禁止している自治体も増えています。
一軒家で出る遺品の量
一般的な一戸建てでも2トントラック3台分以上の遺品があり、そのうちの半分は廃棄処分が必要なゴミです。自分たちで家1軒分の遺品を処分すると遺品整理業者を利用した時に比べて費用は10分の1以下になりますが、費用と引き換えに甚大な手間と時間がかかります。
例えば、週末だけ遺品整理を行った時には、家の中が空になるまで1か月から半年程度かかることもあります。
遺品整理を自分で行うコツは【遺品整理を自分でやるコツと手順・できた、できない2つの体験談】をご覧ください。
遺品整理業者を利用する費用
遺品整理業者に依頼した場合は、戸建て2階4LDKで250,000円程度となります。
この中にはスタッフ4人分の人件費や2tトラック2台分、分別・仕分け費用などが全て含まれている金額です。選ぶ遺品整理業者や遺品の質や量によって合計金額は数万円以上変わるので、訪問見積もりが必要になります。
遺品整理の費用を安くするコツ
料金が安くなる理由の中で最も大きいのが「自分でゴミを捨てること」です。
自分たちで故人の洋服や調理器具、ペットボトルなどを処分してゴミの量を減らし、大型の家具や家電などリサイクル品の割合を増やすと料金は安くなります。ゴミの処分費用が減ることの他にスタッフの仕分けや分別にかかる時間が大幅に減ることが安くなる理由です。
遺品整理にかかる時間
遺品整理業者を利用した場合にかかる時間は4LDK の一軒家で平均8時間です。親が認知症や溜め込み症などでゴミ屋敷状態になっていた時でも、2日間で遺品の回収が可能です。遺品の量や家の大きさに合わせてスタッフの人数を増やすことで短時間での遺品整理ができるようになります。
遺品整理業者を利用すると費用はかかりますが、遺品整理に要する手間や時間を半分以下にでき、精神的な負荷が減るため相続人全員のストレスを軽減することになります。遺品整理業者の活用については、このページの下部「遺品整理業者に親の遺品整理を頼む」でお伝えします。
遺品整理料金の料金については【遺品整理の料金は4つ+αで決まる!いい遺品整理業者の方が安い理由】をご覧ください。
溜め込み症については【ゴミ屋敷の原因は溜め込み症かも。捨てられない原因と効果的な治療方法】をご覧ください。
親の遺品整理を行うのが難しい3つの理由と解決策
親の死後には家一軒分の遺品が残るため、多くの方は遺品の処理に頭を悩ませることとなります。
遺品整理が困難である理由は大きく分けて3つあり、それぞれの解決法についてお伝えします。
①心の整理がついていないから
親の遺品整理には、精神的な負担を伴います。
遺品に触れるたびに故人との思い出がよみがえり、自分の判断で処分してよいのだろうかという罪悪感が込み上げてくることもあるためです。
遺品をきちんと整理して家族が前向きに生活できるようになることは、旅立った親にとっても喜ばしいことかもしれませんが、心情的に困難な場合もあります。
そのような場合の解決策として、無理やり手を付けようとしないことをおすすめします。持ち家の場合などで時間や場所にゆとりがある方は、少し時間をおいてから向き合うことも可能です。遺品の形見分けやお焚き上げ供養などを取り入れると、心理的なハードルが下がります。
最近では手元供養という選択肢もあります。
手元供養について詳細は【手元供養の方法と種類、3つの注意点、遺骨アクセサリー】をご覧ください。
グリーフケア
グリーフケアで心と向き合い立ち直っていく方法もあります。グリーフケアとは「喪失感」に心を寄せて、寄り添い、ありのままに受け入れて、その方々が立ち直り、自立し、成長し、そして希望を持つことができるように支援することです。
東日本大震災をきっかけに広まった、有資格者に気持ちを整えてもらう心のケアの一つです。
②捨てる物の判断ができないから
親の家1軒分の遺品ですから、単純に物が多すぎる状態です。大型家具・家電は運搬や処分が困難ですし、1つ1つの家財を買い取り可能か調べるには労力を要します。趣味の道具やコレクションの品は、その分野に詳しくなければ価値を判断できません。
ネットオークションで市場価格を検索する方法もありますが、遺品の名称が分からない骨董品のお皿や無線機器の型番を一つずつ調べていくのは現実的ではありません。
遺品整理を行う人手が確保できない、価値の有無が分からない物がたくさんあるといった場合は、買取専門業者や遺品整理業者を利用すると便利です。雑多な遺品の中から貴重品や形見を選別して、不用品をまとめて処分してくれます。
遺品整理業者の中でも古物商許可を有する業者であれば、買取と分別・仕分け・回収を同時に行えます。買取専門業者では価値のない遺品は無料引き取りもしてくれませんが、専門性が高いので遺品整理業者よりも高く買い取ってくれることが多いです。
③親の家が遠い・時間がないから
親の家が遠方でありなかなか出向けない、自分の仕事や家事で多忙であり、遺品整理に時間を掛けられないといった状況も、遺品整理を困難にします。
親族トラブルを避けるためにも、遺品整理は相続人を集めて一緒に行うのが理想ですが、全員を何度も集合させるのは現実的ではありません。
時間を確保できない場合も、遺品整理業者に頼むのがおすすめです。業者は戸建て住宅まるごとの遺品整理でも1~2日内に済ませられるため、相続人全員の負担を軽減することができます。
「心」「体力」「時間」で遺品整理を行うのが難しいと感じたら【遺品整理がつらい3つの理由と悲しみを乗り越えた方法】をご覧ください。
親の遺品整理を行う前の5つの準備
実際に自分立ちで遺品整理を行う場合の事前準備は、5つあります。
漫然と取り掛かってしまうと、遺品整理に半年以上かかってしまう危険もありますので、必ず順序だてて行うようにします。
①心の準備を済ませる
遺品を仕分けて処分するために、心の準備を済ませます。
親と別れるという精神的な側面だけではなく、家1軒分の作業に要する時間と労力を見積もった覚悟をする必要があります。
親の写真を見ても涙が流れてこなくなったら、心の準備ができた一つの目安になります。
心の準備ができない方も、相続税の申告には死後10か月内という法的な期限があるため、相続財産だけは整理を済ませます。
②遺言書、エンディングノートの有無を確認
遺言書がある場合は、内容を踏まえて遺品整理を進める必要があるため、故人の机の引き出しや金庫など、遺言書が納められているかもしれない場所を探します。
相続財産や形見分けについての意向をエンディングノートに書き遺している場合もあるので、遺言書と同様に家を探したり、親しい家族に有無を確認したりします。エンディングノートには法的な拘束力はありませんが、故人の意向をできるだけ汲み取ったほうが遺品の扱いが明確になり判断しやすくなります。
エンディングノートには故人の希望を中心に書かれていることが多いので、形見分けや貴重品の位置、最近ではデジタル遺品のパスワードが記載されていることもあります。法的な項目以外にも遺品整理で役に立つ個人の個人情報がかかれているのでまずは遺言者と合わせてエンディングノートの有無を確認します。
エンディングノートの詳細は【エンディングノートで資産や希望を明確にする10項目―無料配布先も】でご紹介しています。
デジタル遺品の処理や取り扱いは【デジタル遺品のトラブルの3つ!パスワードが分からないときの対処法】をご覧ください。
③他の相続人の同意を得る
一人で遺品整理を行うと負担が大きいだけでなく、相続トラブルを起こす危険があります。そのため、遺品整理を行うことを相続人全員に知らせて、あらかじめ同意を取ります。
遺品整理自体も、相続人全員が集まって行うのが理想的ですが、集まれない人がいる場合は「欲しいものはないか」、「任せる代わりに文句は言わないこと」、「処分にかかる費用を分担すること」、といった点を事前に確認しておき、合意を委任状などの形で受け取るとトラブルを回避しやすくなります。
家族間で書面を交わすことに抵抗がある方も今後も今の関係を維持するために書面に残すことをおすすめします。
なお、遺品整理や形見分けに関わった場合は相続放棄を認められなくなることがあるため、相続放棄を希望する人は遺品整理に関わらないように事前に周知しましょう。
家の中を下見する
家の中の状態を確認し、片付けにどれくらい時間と人手が必要で、自分たちでできるのかを判断します。貴重品は相続財産となるため、下見の段階でできるだけ見つけ出して、確保してきます。
負の遺産に注意
借用書や年金や家賃、管理費の滞納金など負の遺産も事前に探します。
親と疎遠だった方や遠方に住んでいた時には子供には気づかれないように、借金や滞納が溜まっているケースもあります。負の遺産があると相続放棄をする方が増えますので、相続手続きも変わります。
実際に遺品整理業者と契約した後から故人の借金が弁護士を通して発覚し、キャンセルが必要になるケースもありました。遺品整理作業まで1か月時間があったので、キャンセル料はかかりませんでしたが、前日や作業終了後ではキャンセル料金が発生します。
下見では「貴重品」「負の遺産」「遺品の量」の3つをチェックしましょう。
計画を立てる
遺品整理は想像を絶する大仕事なので、漫然と続けていると半年掛けても終わりません。
下見の結果から実現可能なスケジュールを立て、遺品整理に取り掛かるメンバー全員に共有します。
具体的には以下の項目を固めます。
・メンバー
・日時と回数
・完了目標期限
・片付ける部屋や場所の順番
・ごみ収集の曜日、ごみ収集センターの場所と営業日
・処分費用の負担割合
費用にはゴミの処分だけでなく、遠方の場合には交通費も含めます。それらの費用をどこから捻出するのか、誰が負担するのかもあらかじめ決めておきます。
遺品整理業者では…
参考ですが、プロの業者が部屋を空にする場合、戸建ならスタッフ5人で1日~2日、2トントラック平均2.5台程度の作業量となります。ワンルームでは2人がかりで8時間程度です。さらに業者は持ち帰った後で資源ゴミの分別や家電・家具など粗大ゴミの処分を行ってくれますが、これらの全工程を自分たちで行う場合、相当な覚悟と労力が必要となることに留意しましょう。
親の遺品整理のやり方5ステップ
遺品整理では、まず相続財産になる貴重品を選り分けます。
次に相続財産以外のものを、「必要な物」「手放すもの」「保留」の3つに分類します。
片付ける範囲が広いなら、メンバーで部屋の担当箇所を決めるのがおすすめです。
仕分けした荷物を一時的に置くスペースがあるとスムーズなので、6畳分くらいの広さを確保します。
1.相続財産、貴重品を探す
遺品整理を始めたら、まず探し出さなければならないのが故人の相続財産です。相続にかかわる物は、死後10か月以内に処理しなければなりません。
貴重品の例
具体的には、銀行や郵便局の通帳、印鑑、保険証書、持ち家の場合は土地や家の権利書、株券、貴金属類、印鑑やクレジットカード、パスポート・マイナンバーカード・年金手帳などの公的書類、生命保険の証書や有価証券、絵画や骨董品などの芸術品などです。
これらは相続財産なので、取扱いに注意が必要です。
多額の相続財産が見つかった場合は、相続税などの問題も出てくるので、すぐに税理士や司法書士などに相談します。
銀行口座は、遺族から銀行に死亡の旨を通知すると凍結されます。引き落としがある場合、放置するとずっと続いていくことになるため、通知漏れに注意します。
また、期限を伴う財産にも注意が必要です。例として、郵政民営化前(平成19年9月30日まで)に預けた郵便貯金は、満期後20年2か月を過ぎると払い戻しの権利が消滅し、以降は現金を受け取れません。
また、平成14年までに発行された国債は、元本と利子の支払いに消滅時効が成立する場合があるため注意します。生命保険にも保険金請求権の消滅時効期間あり、権利発生時の翌日から3年間というのが一般的です。
貴重品は棚や引き出しの中、タンスや額縁の裏などに隠されていることもあるので家中を漏れなく探します。パソコンやスマホの中に取引の記録が残っていることもあるため、ロック解除できない場合は専門業者に依頼することをおすすめします。
負の相続財産
借金や買掛金、未払い金などは負の財産として相続人が負うことになるため、借金などの借用書は絶対に見逃さないよう注意します。
負債などの事情で相続放棄の可能性が場合は、相続放棄の期限が3ケ月以内であることを考慮して、早期な整理が必要です。
インターネットなどで株式やFXなどの取引をしていた場合、亡くなった時点では資産だったものが、遺品整理を先延ばしにしている間に値下がりして負債になっていた、というケースもあるため早急に対処します。
遺産分割協議
相続遺産を漏らさず集めた後には、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。具体的には、「遺産分割協議書」などの書類を作成し、税務署に相続税の申告を行います。相続税の納税期間は、故人が亡くなってから10ヶ月以内です。
2.仕分けする
相続財産を選り分けた後、その他の遺品については必要な物・不要な物・一時保留する物の3つに分類します。
重要書類や形見の品などは、間違えて捨てないように保管場所を決めておくのが安心です。資産価値の低い遺品も、形見分けとして縁のある方々に渡すと供養になります。
形見分け
形見分けとは、親族や故人と親交の深かった人に遺品を贈ることであり、故人との思い出を分かち合うための風習です。
また、仕分け時に取り扱いを決めかねる遺品は、無理に処分せずいったん保留することをおすすめします。冷却期間を置くことで、冷静に判断できるようになるためです。
処分すると決めた物も、自己判断で捨ててしまうと他の親族とトラブルになる場合があります。処分予定の物は捨てる前にまとめて、他の相続人に確認してもらいます。欲しい人がいなければ、次のステップとして売却や処分に移ります。
形見分けについては【形見分けはいつ?誰に渡す?形見をもらった時の正しいマナー】をご覧ください。
3.リサイクルまたは寄付する
不要と判断した遺品のうち、状態が良いもの、需要があるものはリサイクルショップで買い取ってもらったり、海外などへ寄付したりといった方法を検討します。
しかし2021年4月8日現在、ニトリやイケアなど家具の量販店で安く新しい家具が購入できるので、大型家具は需要がなくリサイクルショップで買い取られることはありません。
海外へ輸出している業者もありますが、引き取りには出張料金がかかるので、無料処分はできないと考えた方が無難です。判断しかねる遺品は、買取業者への無料査定を依頼するのがおすすめです。
冷蔵庫の買取とリサイクルは【冷蔵庫の買取は5年以内が最低条件―高く売れる時期とメーカー別査定額―】をご覧ください。
4.処分する
買い手のつかない不用品は処分します。一般ごみ、粗大ごみなど、処分品に応じて捨て方を選んで実行します。
遺品別の処分方法は以下の表にお示しします。
手紙・写真・日記 | 可燃ごみ廃棄でもよいが、気になる場合はお焚き上げ検討 お焚き上げについては 【遺品整理でお焚き上げは必要?供養の仕方と依頼する場所と費用】をご覧ください。 写真は【遺品整理で写真を処分する4ステップ・残す写真は3つの条件をクリアしている】をご覧ください。 |
パソコン | パソコンメーカーに回収を依頼、または小型家電リサイクル法に基づき家電量販店・自治体・不用品回収業者で処分 |
書籍 | 資源ごみ。リサイクルショップ、買い取り専門店。きれいな本なら図書館、学校寄贈も |
DVD | ディスク専用シュレッダーまたはハサミで切断し、自治体指定の分別方法で廃棄 |
携帯電話 | 必要書類を持って携帯会社に報告し、解約 |
衣類 | 形見分け以外はリサイクルまたは処分。海外などへの寄付も |
仏具・仏壇・神棚 | 菩提寺、寺院、仏具店、粗大ごみ処分。お焚き上げが望ましい。 仏壇の処分【仏壇の処分方法5つと注意点―正しい流れと処分依頼先はココ】 位牌の処分【位牌を処分する方法と手順―供養はどこ?費用は?宗派による違い】 遺影の処分【遺影の処分方法3つー供養は必要ない理由と小さくする方法】 神棚の処分【神棚の処分方法は5つ・費用と捨てる時期・燃えるゴミで捨てても大丈夫?】 はこちらをご覧ください。 |
古い道具 | 文化的価値がある古物は、公民館寄付やオークションで売却可能な場合も |
食器 | 形見分け以外はリサイクルまたは処分 食器の捨て方は【食器の捨て方・大量に捨てる・寄付してリサイクルする】をご覧ください。 |
リサイクル家電 | リサイクル家電は自治体で処分できないのでルールに従って処分します。 冷蔵庫【冷蔵庫を処分する4つの方法―買取・引き取りで損なく捨てる】 洗濯機【洗濯機の処分方法4つー売る・譲る・安く捨てたいならー】 テレビ エアコン【エアコンの無料回収は違法行為?理由と正しい処分方法】 |
貸主の分からない借りもの | 価値の高そうな物は3回忌まで保管し、名乗り出る方がいなければ処分 |
5.必要な物を保存する
写真、日記などのうちとくに思い出深い物や、買い直せない・再発行できない物は、捨てずに保管します。
衣類などが大量に残っている場合は、2着までなど上限を決めて選別します。写真はベストショットを選別してアルバム2冊までなどとルールを決めると進めやすいです。
仕事関係・税金関係・同好会や敬老会などの書類や物品は、あとで必要になった場合取り返しがつかないので、数年間保管しておくようにします。
親の遺品整理ができないとき
親の遺品を整理する精神的・身体的な負担を考えると、どうしても実行に移せない方もいらっしゃいます。そのような場合の対処法を次にお伝えします。
相続の整理だけは済ませる
遺品整理に取り組めない場合でも、相続財産については放置できません。
貴重品と負債はすべて洗い出して、遺産分割協議を行い、相続税の納税期限である死後10か月以内に完了させます。
時間が経つのを待つ
気持ちの整理がつかないうちに行うと、故人との離別を意識しすぎたり、遺品を捨てることに罪悪感を覚えたりして精神的な負担がかかります。そのようなときは、最低限の整理だけを済ませて、心にゆとりが生まれた後で遺品整理を行うようにします。
子供たちが遺品の整理で苦しむことは、故人にとってもつらいことです。冷静に向き合えるようになってから、少しずつ手放していくようにします。
供養する
遺品をゴミとして捨てるのが心情的につらい場合は、供養すると気持ちに区切りが付けやすくなります。供養を行うことで物に宿った魂を天に返し、ただの物に変えるという日本の考え方に基づいた儀式です。
仏壇や人形、ぬいぐるみなど魂が宿ると考えられるもので供養の依頼が多いです。
供養は大きく分けると「合同供養」「単独供養」「簡易供養」の3種類あります。
合同供養
合同供養は他の遺品とまとめて供養することで、お寺で行われるお焚き上げやどんど焼きが当てはまります。遺品整理業者では供養対象の仏壇や人形に対して住職がお経を唱えて供養し、料金は5,000円からとなっています。
単独供養
単独供養は遺品個別や対象の家全体に対して供養することで、故人が室内で孤独死をした時や全部に供養したい時に利用します。
お寺に持って行き、供養してもらう方法と住職に来てもらって供養する方法があり仏壇など動かせない家財の場合には訪問供養になります。菩提寺がある時には自分で手配し、費用は30,000円~50,000円が相場でお布施として封筒に入れて支払います。
付き合いのあるお寺がない時には遺品整理業者で個別供養を手配することも可能です。
住職が家を訪問し、対象の遺品または家全体に供養を行います。個別供養費用は40,000円程で、遺品整理のオプションとして見積書に記載されるので遺品整理業者にまとめて支払います。
仏壇の魂抜きやお布施については【仏壇の魂抜き2つのマナーとお布施の金額・しないとどうなる?】をご覧ください。
遺品整理業者を利用する
自分で行う場合に比べて費用は掛かりますが、遺品整理業者を活用すると時間と手間を大きく削減することが可能です。「自分では遺品整理を行えないが、急いで済ませる必要がある」といった方では、業者に依頼するのが現実的です。
寺院・僧侶と提携し、仏壇や愛用品等の物品供養も請け負っている遺品整理業者では、粗大ごみ類の搬出や処分と供養する品の搬出が一度でスムーズに済ませられるので、あれこれと手続きをしたくない時に重宝します。供養料金が事前に明瞭にわかるという点も、メリットです。
遺品整理業者に親の遺品整理を頼む
遺品整理業者を活用するのは、現代では珍しいケースではありません。
手間と時間を大幅に削減でき、精神的・肉体的負担を減らすことが可能です。
遺品整理業者を活用するメリット
遺品整理業者は単に家の中を空にするだけではなく、不用品回収や掃除、片付けにも対応しています。
経験豊富なため貴重品の捜索も得意であり、リサイクル可能な遺品は買取ってもらえます。
仏壇やぬいぐるみなど、処分しづらい物品をまとめて供養してくれる業者もあり、ゴミ屋敷清掃、孤独死の特殊清掃・原状回復工事など、さまざまなケースに対応したサービスが用意されています。
不動産業者と提携し、空き家となった実家の売却処分相談に応じてくれる業者もあります。
ぬいぐるみの捨て方は【ぬいぐるみの処分方法4つ-売る・寄付・燃えるごみ…供養は簡単にできる】をご覧ください。
遺品整理業者の費用相場
基本プランとしての費用の相場は以下のとおりです。
部屋の間取り | 金額 |
1R・1K | 35,000円~ |
1LDK・2DK | 80,000円~ |
2LDK・3DK | 140,000円~ |
3LDK以上・戸建 | 180,000円~ |
エアコン取り外し、作業員追加、供養や特殊清掃などは、オプション料金が追加されるのが一般的です。部屋の面積やオプションの有無により数万円~の差額が発生しますので、一括見積や個別問い合わせで、実際の費用を見積もることが大切です。
特殊清掃については【特殊清掃と遺品整理・賃貸物件の場合の費用】をご覧ください。
遺品整理の料金相場や安くするコツは【遺品整理の料金相場はいくら?費用を安くする3つの方法】をご覧ください。
遺品整理業者の選び方
数ある業者の中には、残念ながら高額請求や回収品の不法投棄などの行為を働く悪質な業者も存在します。
悪質業者を避けることはもちろん、自分のケースに適した業者を賢く選ぶための方法を以下にお伝えします。
料金
契約前に、必ず複数社で合い見積もりを取るようにして料金確認します。
合い見積もりを取ると、相場より不当に高額な料金を要求する業者を除外することができます。料金が低すぎる業者も、あとで高額な追加料金を請求してきたり、不法投棄などの問題を起こしたりする恐れがあるので避けるようにします。
サービス
具体的なサービス内容としては、ゴミ屋敷清掃、孤独死ケースの特殊清掃・原状回復工事への対応・お焚き上げ供養、不動産の処分相談などです。
自分の実家の遺品整理で求めるサービスに、対応しているかどうかが業者選びのポイントの一つです。
信頼性
無許可の業者は高額な料金を請求してきたり、きちんと作業しなかったりというトラブルを起こす危険があるため、業者のホームページで許可番号を調べるようにします。
買い取りサービスには古物商許可が不可欠であり、廃棄物の運搬には家庭系一般廃棄物収集運搬許可、自社での配送には緑ナンバーや黒ナンバーの貨物車などが必要です。
スタッフが資格をきちんと所持しているかどうかも判断材料のひとつです。
遺品整理士は、法令に沿った廃棄物処理方法や、遺品の取り扱いや遺品整理に関係する法律について講義を受け、合格した人だけが取得できる資格です。遺品整理業者にとって必須ではありませんが、この資格を有するスタッフが在籍する業者は信頼性が高まります。
遺品整理業者の選び方については、【遺品整理業者の選び方・失敗しない3つのポイントでトラブル回避する】をご覧ください。
親の元気なうちに生前整理する
親が生きているうちに準備を始められると、遺品整理の苦労を劇的に減らすことができます。
生前整理のポイントは、財産を一覧化する、家具・物品の処分選別することです。
財産を一覧化する
具体的な内容としては、重要書類・貴金属・現金の保管場所をノートにまとめて整理することが挙げられます。
ノート自体は銀行貸金庫に入れたり、信用できる親族に預けたりするのが防犯対策として有効です。
相続関係は遺言書に残し、形見分けなどの希望はエンディングノートに書くと、残された家族の手続きがしやすくなります
エンディングノートの書き方は【エンディングノートで資産や希望を明確にする10項目―無料配布先も】でご紹介しています。
家具・物品の処分と選別
今暮らすのに必要ない物を処分し、思い出の品を取捨選択します。
無理やり捨てようとすると親との衝突を招くため、まずは自分自身が断捨離して見せるなどの配慮が必要です。
実家を片付けるコツは【実家の片付けの6つのコツと片付け業者を利用する目安】
生前整理については【生前整理で5つのやることリストー自分のためと家族のために始める時期】
老前整理については【老前整理を成功させる3つのコツと失敗する3つの原因】をご覧ください。
断捨離で後悔しない方法は【断捨離で後悔したモノ8つ・失敗しない3つのコツで捨ててよかった】をご覧ください。
親が生前整理を嫌がる場合
親が頑固になってしまって、説得できないというケースもあります。生前の片付けが無理なら、死後に遺品整理を業者に依頼するためのお金を用意しておくのも一つです。
費用はかかりますが、親の説得で消耗したり衝突したりといった問題を避けるためには意味のある出費と考えることもできます。
その場合は、遺品整理業者の費用として200,000円を目安に残しましょう。4LDKの庭なしの戸建ての平均的な金額ですので、庭に物置がある時や部屋数が多い時には50,000円程度の上乗せが必要になります。
物置の解体方法は【物置の解体費用は15,000円~自分で解体すると安くなる?】をご覧ください。
親が亡くなった実家
遺品整理の中で一番大きなものが不動産です。空き家になる場合は実家の処分を決める必要があります。
空き家になった実家の管理方法
空き家の管理は、月に1回程度、換気・掃除・通水・雨漏りやカビの確認・庭木の手入れ・郵便物の整理が必要です。遠方で難しい場合は、近くに住む親類や知人を頼るか、空き家の管理サービスを行う業者に依頼し、しっかり管理する必要がある。
空き家でも固定資産税や維持管理費などで年間20万円程度の維持費がかかるので、住む予定がない場合には売却の手続きへと進むことをおすすめします。
空き家の管理については【空き家の管理は月に1回30分・ポイントが分かればで自分でできる】をご覧ください。
空き家になった実家を売却する方法
売却する場合、まずは不動産の名義変更を行います。自分の名義でないと、不動産の権利関係で何かしらのトラブルが発生した際に、自分の持ち物であることを主張できない可能性があるためです。
実際に実家を売却する際は、不動産会社を選定して査定を受け、売り出し価格の決定後に不動産を売り出し、購入希望者が出たら売却条件の話し合いにより売買契約が成立すれば引き渡しとなります。
実家の空き家については【実家が空き家になったらまずやる手続きと費用。管理方法と空き家対策】をご覧ください。
親の遺品整理まとめ
・親の遺品整理を始める時に決まりはないが早い方がいい
・相続関連の遺品整理は死後10か月以内に行い、遺産分割協議を完了させる
・親の遺品整理には、時間や手間がかかる
・自分で進める時には計画的に行うと挫折しない
・精神的・身体的な負担を軽減するには、遺品整理業者を利用する
・実家が空き家になってしまった時には管理や売却が必要
以上、親の遺品整理の方法と負担を減らすコツについてお伝えしました。
残された家族が遺品にきちんと向き合い、未来に進んでいく様子は、親にとって何よりの供養となるはずです。うやむやにせず、心の整理がついた段階で遺品整理を行いましょう。
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