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遺品整理

エンディングノートで資産や希望を明確にする10項目―無料配布先も

エンディングノート

エンディングノート



【監修】遺品整理士協会認定 遺品整理士
片山 万紀子

祖父の遺品整理をきっかけに遺品整理や不用品回収に興味を持ち、遺品整理士協会認定・遺品整理士の資格を取得。ReLIFE(リライフ)のディレクターをする傍ら、年間600件以上の遺品整理に携わる。遺品整理を通して「ありがとう」という言葉をいただけることを仕事のやりがいとしています。

1.エンディングノートを作るメリット

エンディングノートは、自分の情報や亡くなった後の希望などを書き残すノートです。
終活を進めるのに便利な道具で、書式や書きし残すノートに決まりはないので自由に書くことができます。

エンディングノートを作るメリットは3つあります。

1-1.家族に自分の思いを伝えられる

エンディングノートを使うと、家族や大切な人への感謝の気持ちを書き残したり、家族も知らなかった出来事や思い出を共有できます。

普段の生活の中では感謝を伝えるのが難しい場合も、エンディングノートであれば気持ちを丁寧に書き記すことが可能です。

形見分けで誰に何を送りたいかのリストを作成し、その遺品を選んだ理由やそれぞれの家族へのメッセージを残しておくこともできます。メッセージを受け取った方が故人の思いを受け止めてくれれば、遺産相続のトラブルを避けることにもつながります。

自分が亡くなった後でも、家族に自分の思い・感謝を伝えられるのが、エンディングノートの大きなメリットです。

1-2.自分の人生と向き合える

エンディングノートに自分史年表を書くと、自分の人生を振り返ることができます。

自分の価値観や大切にしてきたものを自身が把握できるので、残りの人生をどう生きるか考える機会になります。チャレンジしたくてもできなかったこと、途中であきらめたことを見直して再チャレンジすることも可能であり、これからの人生を前向きに生きることができます。

1-3.資産や終活の目的が明確になる

多くのエンディングノートには、資産を記入するページがあります。
例えば、自分の所有する銀行口座や不動産、株式、負債の有無などの項目です。

自分の終末期を具体的にイメージして備えるのが終活の目的と言えるので、お金に関するこれらの情報の管理は必要不可欠です。死を終点として自分の未来を現実的に考えると、残すお金・使うお金を具体的に見積もれるようになります。

資産を把握することは、遺産相続時の家族の負担を減らすことにもつながります。

終活の進め方は【終活とは?5つのやることリスト-エンディングノートに書くこと】をご覧ください。

2.エンディングノートの選び方

エンディングノートの書式に決まりはないので大学ノートに書き記すだけでもよいですが、市販品や無料配布のエンディングノートを使うと重要項目があらかじめ書いてあるので便利です。

重視したい項目によって、自分に合ったエンディングノートを選ぶのがおすすめです。

2-1.エンディングノートの入手先

市販のエンディングノートは書店やネット通販で販売しており、1000円~1500円程度で購入できます。

葬儀社・寺院などがエンディングノートを無料で配布しているケースもあります。
また、マイクロソフト社はWord(文書作成ソフト)形式のエンディングノートのテンプレートを公開しており、無料でダウンロードして使用できます。

他にも、紙のノートを使わずスマホアプリやパソコン内にエンディングノートの内容を保存する方法もありますが、パスワードやロックを解除し、家族が見つけやすい状態にしておく必要があります。

2-2.目的に合わせて選ぶ

これまでの人生をじっくり振り返りたい場合は、自分史年表など自分の履歴ページが充実しているエンディングノートを選ぶのがおすすめです。

自分自身の日々の覚え書きとしてもエンディングノートを活用したいなら、銀行口座や保険、クレジットカード、重要な連絡先などの項目が見やすいものが便利です。

亡くなった後の要望を重点的に書き込みたいという方は、葬儀や相続などの内容が充実したエンディングノートが適しています。

2-3.タイプ別エンディングノート3選

【パブリッシャーズ「自分史年表+エンディングノート 令和版」】

自分史年表が充実しているタイプのエンディングノートです。
全128ページと他のエンディングノートの2倍近いページ数があり、自分のこれまでの人生やこれからの希望をじっくり考えながら書き込んでいくことができます。

自分の好きなものや旅の思い出などのページもあり、若い方が自分の人生を充実させる目的で使うのにも適しています。

【コクヨ「もしもの時に役立つノート」】


入院時や相続時などの「もしもの時」に備え、自分の大切な情報を1冊にまとめておけるノートです。
散らばりがちな自分の情報を一つにまとめられるため、第三者へ伝えるだけでなく、自分自身の備忘録としても活用できます。法律相談弁護士サイト・弁護士ドットコムが監修しており、発売から6年で60万冊を売り上げた実績のあるエンディングノートです。

【二見書房「もしものときのエンディングノート」】

相続問題、遺言相談など民事関係に強い弁護士の江崎正行氏が監修したエンディングノートです。
弁護士の視点から必要な項目がすっきりまとめられており、大きい文字で見やすく、書き込みやすいのがポイントです。
価格は他のエンディングノートより500円程度安いです。

3.エンディングノートに書く10の項目

エンディングノートには何を書いてもよいのですが、以下の10項目はとくに重要です。
防犯のため、資産や借金の項目は詳細を書かず一覧表を残すだけにしたほうがよいでしょう。遺言書を作成しておくのも有効です。
盗難・悪用を避けるため、パスワードやキャッシュカードの暗証番号はエンディングノートに書き込まず、別保管することをおすすめします。

3-1.自分の基本情報

・氏名
・生年月日
・現住所
・本籍地
・健康保険証、年金手帳・証書、保険証券、個人番号カードなど重要な書類の保管場所
・家族構成
これらは自分の死後、死亡届の提出や年金受給停止手続きなどを行う際にも必要な情報です。自分の人生を振り返る目的で作成する場合は、今までの自分の趣味や特技、好きな食べ物などを記載するのもおすすめです。

介護者が必要になったときには介護者が趣味や嗜好の把握ができ、互いに負担が少なくなるので詳細に書きます。

3-2.医療・介護の希望

・加入保険
・かかりつけの病院、医師
・持病、服薬内容、お薬手帳の保管場所
・副作用歴、アレルギーの有無
・延命措置や終末期医療に関する希望
終活だけでなく急な入院などの際にも必要になるため、加入している保険や服用薬などの情報はすぐ調べられるようにしておきます。

3-3.葬儀・お墓の希望

・葬儀のときに連絡してほしい親戚や友人の連絡先
・菩提寺
・葬儀の形式と予算
・喪主をお願いする人
・希望する埋葬方法や墓地
・予算

3-4.家族・友人など重要な方の連絡先

・名前
・所属、間柄
・連絡先(メールアドレス、電話番号、住所)

3-5.ペットの情報

・名前
・種別(犬、猫、ハムスターなど)、性別、生年月日
・予防接種歴、かかりつけの動物病院
・食事内容(フードの銘柄、食事量と1日の食事回数、好きな食べ物、与えてはいけない食べ物)
・生活習慣(トイレ、散歩、日常のケア)
・自分の死後にペットを頼みたい人の名前・連絡先・了承の有無・渡してほしい飼育資金の金額・資金源

3-6.インターネット回線や携帯電話、SNSに関する情報

・解約が必要なインターネット回線、携帯電話情報
・利用しているSNS(LINE、Facebook、Twitter、Instagramなど)の一覧
インターネット回線や携帯電話は死後に解約しなければなりません。
また、いわゆるデジタル終活と言われる、不要なSNSのサービス停止手続きが必要です。
ログインパスワードは、別保管するのが防犯対策として有効です。

3-7.遺言書の有無

エンディングノートとは別に、遺言書がある場合は保管場所を記載します。
残された家族のためを思って遺言書を作成した場合でも、遺言書の存在が誰にも知られないままだと無駄になってしまうため、家族に遺言書の存在を伝える他にエンディングノートにも記載すると安心です。

公正証書遺言は原本を公証人役場で保管しますが、自筆証書遺言は遺言者自身の責任で自己管理することとなります。生前に遺言書を見られることや干渉されることを防ぐため、自宅での保管を避けて銀行の貸金庫などを利用するケースが一般的です。

3-8.資産・負債状況

・銀行口座
・所有不動産
・株式・投資信託
・ゴルフ会員権などその他資産
・人に貸しているお金
・負債の有無

防犯のため口座の暗証番号は書かず、一覧を書くだけにするのが安心です。

死後に口座は凍結されてしまうので、仮に暗証番号を知っていても入金・出金はできなくなります。銀行で手続きして遺族であることが証明できれば、口座のお金は払い戻しを受けることができます。

また、家族が一番迷惑するのが隠されていた負債です。相続放棄できるのは3ケ月までなので、負債の存在を知らないで相続してしまうと悲惨なことになります。負債は必ず家族に伝える必要があります。

3-9.遺品整理について

・処分する品目
・形見分けの品目と相手
・寄付・寄贈する品目と相手先

アルバムやコレクション、書類など処分前に確認が必要な遺品が残されていると、家族が選別や処分する際に時間を消費します。遺品の処分方法を記すことで家族の負担を減らせます。
遺品整理業者を利用すると1部屋であっても5万円以上の費用が発生しますので、自身で生前整理ができない時には遺品整理業者に見積もり依頼をし、遺品整理費用を現金で残す方法もあります。

3-10.周囲の方へのメッセージ

内容は感謝の気持ちや、言いそびれていたこと、形見分けのことなど、メッセージはどんなことでもかまいません。
ただしネガティブな内容や愚痴は避け、お互いに気持ちの良い別れとなるように気をつけます。
写真や絵を添えると、故人との思い出がよみがえるので喜ばれます。

形見分けについては【形見分けはいつ?誰に渡す?形見をもらった時の正しいマナー】をご覧ください。

4.エンディングノートの保管場所

エンディングノートは取り出しやすく、分かりにくい場所に保管し配偶者や子供には存在と場所を伝えます。エンディングノートは自分の死後や認知症などで意思を伝えられなくなった時に家族に見てもらうものだからです。

エンディングノートには重要な個人情報が書かれているため慎重に扱う必要がありますが、保管場所を貸金庫など外部にしてしまうと、いざというとき見てもらえない恐れがあります。

自宅のタンスの奥や本棚の上段の右端など普段は目につかないが、すぐ届く場所が保管場所に向いています。

4-1.定期的に見直す

資産状況などは、時間が経つと内容が変わる場合もあるので、年一度程度、見直し必要あれば加筆・修正する習慣をつけます。

医療や介護、葬儀については自身の健康状態や社会情勢・トレンドによっても変更がある項目です。例えば、2021年1月14日現在、新型コロナウィルスの影響を受け、家族だけで葬儀を希望する方も増えています。
希望が変わったときはその都度エンディングノートを書き直します。

エンディングノートには法的効力がなく、自分の希望を記録するためのものなので、自由に加筆、訂正することができます。

4-2.保管場所を伝える相手とタイミング

エンディングノートは個人情報の塊ですから、保管場所を伝える相手は配偶者や子供などごく親しい家族のみにします。
自分が元気なうちに保管場所を伝えたほうが、お互いに気負わず終活を進められるでしょう。不慮の事故や病気で意思疎通ができない状態になると、エンディングノートの存在すら伝えられなくなってしまいます。
また、意思疎通が可能でも大病の後にエンディングノートの話を急に切り出せば、家族が死を想像して動揺する恐れがあります。

エンディングノートの本来の目的である自分と家族の人生をより良いものにするためにも、自身と家族が安定しているときに家族に伝えます。

5.エンディングノートには法的効力がない

エンディングノートはあくまで希望を書くためのノートであり、法的な効力はありません。そのため、遺産相続など確実に実行したい内容は遺言書に書きます。

5-1.エンディングノートと遺言書の違い

エンディングノート 遺言書
法的効力 なし あり
形式・様式 なし あり

※規定要件を満たさないと無効

費用 数百円〜 自筆証書遺言:数百円〜

公正証書遺言:数万円〜

記載内容 自由 主に財産分与

エンディングノートのよくある質問

エンディングノートに関する、よくある質問とその答えを記載します。

エンディングノートに書いた希望は、必ず遺族に叶えてもらえる?

エンディングノートには法的効力がないので、葬儀やお墓などの希望を通してもらえるかは、最終的には遺族の判断となります。

どうしても叶えたい希望がある場合は、生前にお墓の契約を済ませたり、葬儀を手配したり、遺言書に書いたりする必要があります。
死後のことですから、希望が通ったかを自分の目で確認することはできません。譲れない部分だけは確実な手段で残し、それ以外の部分は未来ある家族の判断に委ねるのも一つの考え方です。

親にエンディングノートの作成を頼んだら失礼?

エンディングノートを書いてもらうよう頼むのが失礼かどうかは、親の死に対する考え方次第です。親が肯定的に「死」を捉えているのであれば、スムーズに快諾する確率が高いです。

終活が広く認知されるようになって10年ほど経ちましたが、それ以前は死の話題をタブー視する流れがあったため、人によってはエンディングノートを嫌がることもあります。

しかしエンディングノートは本人・家族にとってメリットとなる部分が多く、ECサイトのレビューでは親に書いてもらう目的で購入したというケースも見られます。親が終活に拒否感を持っていなさそうであれば、頼んでみるのもおすすめです。

エンディングノートに埋められない項目があるときは?

エンディングノートは無理に全部の項目を埋める必要はないので、書けない時は空欄または特記なしと記入します。

例えば年、40代から50代で終活の覚書程度でエンディングノートの作成を始めた方は、介護や葬儀については書きにくいでしょう。
年齢を重ねていき、身近な出来事になると自然と希望がでますので、その都度、希望を書き加えていきます。

医療や葬儀などの希望が変わったらどうする?

希望が変わったら、その項目を書き直します。
遺言書を書き直したい(撤回したい)場合は民法で定められた方式で行わなければなりませんが、エンディングノートは何度でも自由に加筆訂正できます。

エンディングノートのまとめ

エンディングノートは、自分の情報や亡くなった後の希望などを書き残すノートです。
エンディングノートを使うと、家族に思いを伝えられ、残りの人生を前向きに過ごすことや、資産の管理が可能になるというメリットがあります。

遺言書と違って法的効力はありませんが、エンディングノートは自由に書きこむことができるので、情報を柔軟に更新することが可能です。
とくに重要な10の項目について整理しエンディングノートに記入すると、終活の質を高めることができます。

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