豆知識

遺品整理

実家が空き家になったらまずやる手続きと費用。管理方法と空き家対策

近年、空き家が社会問題として取り上げられています。
この記事をお読みの方の中にも、ご両親の死去や施設入所などにより、空き家となった実家の扱いにお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、実家が空き家になってしまった場合の対処法と空き家にならない対策をお伝えします。



【監修】遺品整理士協会認定 遺品整理士
片山 万紀子

祖父の遺品整理をきっかけに遺品整理や不用品回収に興味を持ち、遺品整理士協会認定・遺品整理士の資格を取得。ReLIFE(リライフ)のディレクターをする傍ら、年間600件以上の遺品整理に携わる。遺品整理を通して「ありがとう」という言葉をいただけること仕事のやりがいとしています。


1.実家が空き家になる理由

実家,空き家
総務省の平成30年住宅・土地統計調査によると、全国の空き家の総数は約849万戸に及び、住宅総数に占める空き家率は13.6%と過去最高です。空き家は今後も増加すると見込まれており、特に地方では空き家率の上昇が顕著になっています。

なぜ、これほどまでに空き家が増加しているのでしょうか。その理由として、日本の社会的背景と、空き家になる実家の多くが資産価値が低い物件であることが挙げられます。

1-1.実家が空き家になる社会的背景

実家,空き家
日本の少子高齢化と人口減少は、先進諸国でも類を見ない速度で進んでおり、空き家増加の根本的な原因となっています。高齢の夫婦のみの世帯の8割以上は持ち家に住んでおり、子供たちは各々でマイホームを購入しているケースが多いです。

空き家の取得原因としては相続が最も多く、国土交通省資料『空き家等の現状について』によると、貸家用・売却用・別荘等以外の用途の世帯所有の空き家の半数以上は相続によって取得したものであることが示されています。
実家,空き家
引用元:国土交通省HP

実家を相続したものの、居住できずに放置する所有者が増えているのです。とくに所有者の自宅からの空き家までの距離が遠くなるほど、利用できず放置している傾向が見られます。
そんな状況にも関わらず、新築物件がどんどん建てられているのが現状です。
人口減少により全国的に住宅が余っている状態の中、新築が売れていく一方で中古住宅が活用されず、空き家の増加に拍車がかかっているのです。
そのため、不動産の査定価格(資産価値)と実際の売値が乖離する状況も起こっています。

不動産の価格査定は住所、面積、築年数、周辺環境などから算出されるものですが、実際に買い手がつかなければ希望価格で売ることができず、大幅に価格を下げざるをえなくなるのです。

1-2.価値の低い空き家が多い

実家,空き家
残念ながら、空き家となった実家の中には、中古物件としての価値が低いものも多いのが実状です。
価値が低い、つまり不動産業者が扱いにくい空き家には、いくつかの特徴があります。
まずは、地方や郊外にある空き家です。特に人口減少が顕著な地域では売却しづらい現状があります。

個性的な間取り

個性的な間取りの物件も、買い手が付きづらいので敬遠される傾向にあります。
過去の相続で登記簿の名義を変更していなかったり、隣家との境界線がはっきりしていなかったりする空き家も売却が困難です。

老朽化が進んでいる

また、当然ではありますが老朽化した物件は価値が下がります。

空き家の期間が長くなるほど、空気や湿気が家の中に溜まりカビや害虫が繁殖しやすくなります。相続した実家の築年数は築40年以上であることも多い上、相続後5年以上放置されていたりした中古住宅は、劣化が進んでいるため、そのままでは貸すのも売却するのも困難です。

実家は資産価値が低いことや管理が行き届いていないことが多く、売却や賃貸にも出せないことが、実家が空き家になる理由です。

2.空き家となった実家を放置した際の5つの問題点

実家,空き家
空き家となった実家を放置した場合に起きる弊害は5つあります。

2-1.資産価値の低下

実家,空き家
そもそも住宅は時間経過で劣化していくものですが、人が住まなければ換気不良や管理不十分になるため劣化が速まっていきます。
6か月も放置されれば、カビや水道管のサビ付きなどにより、そのままでは住めないほど劣化してしまい、売る・貸す、といった処分が困難になります。

2-2.放火・不法投棄等の犯罪

実家,空き家
空き家は人目につかないうえ、枯れ草などの可燃物が散乱しがちなので、放火犯に狙われやすいです。
放火によって周囲の家屋に延焼した場合、ゴミや枯れ草の放置などで、所有者が延焼の原因を作ったと認められれば、重大な過失があったとして損害賠償責任を負うことも考えられます。

不法投棄の被害

不法投棄の場所としても狙われやすくなります。
庭などに粗大ごみを不法投棄されると、「あそこには捨てても大丈夫だ」と認識され、さらなる不法投棄を呼ぶ悪循環が起こる危険があります。

また、家財道具や寝具が残っていれば、不審者が住みつくリスクが上がります。犯罪組織がだまし取った商品や特殊詐欺の現金の送り先として空き家を利用するケースもあり、放置された空き家は犯罪や事件の温床となりうるのです。

2-3.近隣トラブル

実家,空き家
管理されず劣化した空き家は地域景観を損ね、周辺の生活環境に悪影響を及ぼします。
加えて、ゴミの不法投棄があれば悪臭や害虫・害獣が発生する原因となります。
公衆衛生を悪化させれば、近隣トラブルは避けられません。
老朽化した住宅が台風被害などにより倒壊・損壊して、周辺住居や通行人に被害を与えた場合は、損害賠償を請求されるリスクもあります。

2-4.税金・維持管理費

実家,空き家
空き家を所有する際に無視できないのが、固定資産税・都市計画税などの税金や、空き家の劣化を防ぐための維持管理費といった費用面での負担です。
実際の費用は後述しますが、総額で年間20万円以上の負担が発生します。

維持管理の費用を惜しんで空き家を放置すると、「特定空き家」に認定され固定資産税が最大で6倍になることもあります。
特定空き家とは、『空き家等対策の推進に関する特別措置法』(通称『空き家特別措置法』)に規定される、倒壊の危険がある建物や、著しく不衛生であったり景観を損ねたりと問題のある空き家のことです。

特定空き家に認定されると、立木の伐採や住宅の除去などの助言指導、勧告、命令、さらには行政による強制執行されることがあります。行政代執行による空き家の解体処理などがされた場合には、空き家所有者が費用を負担しなければなりません。
行政からの改善命令を無視し続けた時には、所有者に対して50万円以下の過料が科せられます。

固定資産税の軽減措置も、特定空き家では受けられなくなります。
通常は家が建っていれば土地の固定資産税が6分の1になるという特例が受けられるのですが、特定空き家に指定されると特例の適用が受けられなくなり、通常の更地と同じ税金が課せられます。

2-5.田園住居地域

実家,空き家
なお、2018年に改正された都市計画法で、用途地域に田園住居地域が新たに追加されたことにも注意が必要です。田園住居地域に指定された地域に空き家を持っている方は、建て替え時の建築制限を考慮するが必要があります。

第1種低層住居専用地域の建物であれば建て直し時の影響はありませんが、田園住居地域の制限に従わなくてはなりません。例えば、田園住居地域では事務所やホテル・旅館や娯楽施設などは一切建てられないなど厳しい制限が設けられています。
また3階建て以上の建物を建てることもできません。

3.空き家となった実家を所有する際にかかる費用と控除

実家,空き家
空き家を処分するか所有し続けるかを決断する際には、年間費用をシミュレーションする必要があります。
空き家を所有し続ける際に毎年かかる税金の他にメンテナンス費用がかかります。

ここでは、都内の一戸建て(木造2階)、40坪、駐車場2台、築30年の空き家を例として、1年間にかかる費用をご紹介します。
ご自身の空き家の維持費用をシミュレーションする際の目安としてご参照ください。

3-1.1年間でかかる費用

実家,空き家
例えば、東京都内の一戸建て(木造2階)、40坪、駐車場2台、築30年の場合1年間で26万円~75万円の維持費がかかります。これに加えて、初期修繕費も加算されます。

項目 概算費用 備考
固定資産税 100,000~120,000円程度 税率1.4%(標準課税)、住宅用地は特例で評価額×1/6。
毎年価格が変動。
都市計画税 15,000円~30,000円程度 税率0.3%(制限課税)、住宅用地は特例で評価額×1/3。
広さ・面積により変動。
定期修繕費 100,000円~500,000円程度 雨漏り予防のメンテナンス、庭の草刈り、住宅劣化を防ぐための維持管理
保険(火災保険・地震保険等) 10,000円程度 契約内容による
水道光熱費 20,000~40,000円程度 利用頻度、自治体、契約プランによる
交通費 10,000円~50,000円程度 移動距離、帰省頻度による

3-2.初年度にかかる費用は高い

実家,空き家
空き家を相続したとき初年度のみにかかる費用として、初期修繕費・メンテナンス費用が挙げられます。
屋根、床を含むリノベーションの場合は総額500万円~2,000万円はかかります。施工範囲や劣化状態によって大きな差があるため、正確な費用を出すには所有物件の査定が不可欠です。

4.空き家になった実家の相続に必要な手続き

実家,空き家
親の死亡や、介護施設への入所により実家を相続・贈与される際には、以下4点の手続きが必要です。

4-1.相続前に実家の価値を調べる

実家,空き家
まずは、相続前の段階で実家の資産価値を調査します。
現時点での資産価値を把握できないと、実家を手放すか、所有し続けるかを検討することができないためです。
国土交通省が公表している「地価公示」や「不動産価格指数」、「都道府県地価調査」などで、自分の不動産の相場を調査することが可能です。
インターネットで不動産売却査定サービスを申し込み、複数の不動産会社へ査定を依頼するのも有効です。その際には、不動産の登記簿謄本や購入時の売買契約書、重要事項説明書、測量図や図面が必要であり、情報が多いほど査定額の精度が高くなります。

4-2.相続人を決定する

実家,空き家
空き家となる実家を所有する、相続人を決定します。
実家に居住する予定の親族がいる場合は、その方を相続人とするのが通常です。
実家を売却などにより手放す予定の場合でも、諸々の手続きを行う方を相続人として明確にする必要があります。

親が死亡している場合は遺言書の有無を確認し、実家の相続に関して遺言があればそれに殉じます。遺言が存在しない場合は、相続遺産の一つである実家を誰が相続するか、相続者間で協議します。
相続遺産の分割には複数の方法があり、空き家は代償分割するのが望ましいです。

封印されている遺言書は勝手に開封することはできません。勝手に開封した時には遺言書の効力が無くなったり、開封者は5万円以下の過料に処せられることもあります。自宅で遺言書が見つかったときには家庭裁判所に申し立てをして、相続人が立会いのもと開封します。

換価分割

換価分割は空き家を売却したお金を相続人で分ける分割方法です。
現金で分けることで平等にはなりますが、兄弟の間で実家を残したいと考える人が1人でもいると売却ができません。

実家の売却に相続人が皆、同意してくれる時には財産が平等に分けられますし、管理の必要もなくなるので後のもめごとにも発展しにくいです。

代償分割

代償分割とは、空き家を一人の人間が相続をして、それに見合った金額を他の相続人に現金で支払う方法です。

不動産鑑定士に不動産評価を依頼して、その価値を相続人全員が共有し、遺産分割協議書に、「代償分割によって他の相続人に、現金を支払う」という内容を明記します。代償分割は他の分割方法とは異なり、資産価値を損ねることがないうえに、単独で活用方法や売却の時期を決定することができます。

実家の空き家を兄弟など複数人で相続することになった場合の最善の方法と言われています。

現物分割

土地を分筆して相続人がそれぞれの筆の所有者になる「現物分割」という方法もありますが、現実的には難しい方法です。

現物分割の場合には土地の他に家屋も分割する必要がありますが、室内を「玄関からリビングまでは兄の分」「階段は弟の分」と分けたとしても、活用もできませんしトラブルのもとになります。

現物分割では土地を分割することになりますし、将来建て替えたくなったとき、建蔽率、容積率などの法的規制により同じ規模の建物が建てられない可能性もあります。

共有

現物分割と同様におすすめできない方法の一つに共有があります。
共有は空き家の所有区分を平等に分割する方法ですが、将来相続人が増えると処分や活用が難しくなりますので、選ばれない方法です。

平成29年から導入された「法定相続情報証明制度」を活用すると、亡くなった親の戸除籍謄本等の束を何度も出し直す必要がなくなり、相続手続きを簡易化できるのでおすすめです。

4-3.実家の登記名義と敷地境界線を確認する

実家,空き家
土地・建物の登記名義と敷地境界線は、不動産売却時にも必要な情報となります。
土地、建物の名義が亡くなった先祖のままになっているケースも見られますが、そのような場合は売却が困難です。

敷地境界が画定していない物件も、なかなか売却できません。地積測量図と照合して、それぞれのポイントに敷地境界標が打ち込まれているかの確認が必要です。
もし境界が確定していない場合は、土地家屋調査士に依頼して、境界を確定します。
土地家屋調査士に実地調査を依頼する場合の費用は、敷地面積や作業内容にもよりますが、総額6~10万円程度が目安です。

4-4.マンションの場合

実家,空き家
実家の空き家が分譲マンションの場合には、管理費や修繕積立費の滞納がないかを確認します。
管理組合や委託されている管理会社に確認し、万が一滞納があれば、相続人が支払い義務を負うことが原則です。滞納金がある時には売却ができません。

滞納額の支払いを免れるためには相続放棄という選択肢も存在しますが、マンション以外の一切の相続財産も放棄しなければならず、相続事由発生から3カ月以内に行う必要があります。

5.空き家の実家を相続放棄する選択もある

実家,空き家
空き家となった実家の相続を放棄するという手段もあります。

とくに親が負債を抱えていた場合は、相続すると自分が返済義務を負わなければならないため、相続放棄を選択するのも有効です。
しかし相続放棄には期限や注意点が存在します。

5-1.相続放棄の手続き方法

実家,空き家
相続放棄を行う際は、相続放棄申述書と住民票、戸籍謄本などの必要書類を揃えて、家庭裁判所へ提出します。
相続の開始を知ったときから3か月以内という期限があり、期限を過ぎると相続放棄はできません。

5-2.相続放棄の場合の注意点

実家,空き家
相続放棄では、一部の財産だけを放棄することはできないため、「実家だけを放棄する」といった選択肢はありません。全財産を放棄するか、負債・空き家など面倒な財産を含めたすべてを相続するかの2択となります。

また、相続放棄の際は親族への配慮が必要です。
自分が相続放棄すれば、他の相続人に負の財産や空き家を含めた一切の財産が押し付けられることになるため、親族間で話し合った上で決定します。

相続人全員が空き家となった実家の相続を放棄した時には、国に継承されることが民法で定められています。国に継承されるまでの手続きは複雑で時間もかかります。手続きの間に空き家の倒壊や放火等トラブルが発生すると相続人が責任を負うことになります。

6.空き家の実家を相続したら行うこと

実家,空き家
実際に空き家となった実家を相続した際には、資産価値を損なわないための維持管理を行います。
「特定空き家」に認定されるような放置状態は、罰則や固定資産税の増額、不動産売買の不利な状態に陥ってしまうため、避けなければなりません。
売却などで空き家を手放す予定のある方も、売買が完了するまでは家の管理・メンテナンスが必要です。
具体的な管理方法は、以下の3点です。

6-1.電気・ガスの使用を止める

実家,空き家
年に数回程度しか訪問できない空き家の場合は、電気・ガスを止めるかどうか検討します。住環境が整っていると、不法侵入者に住みつかれるリスクがあるためです。

水道は止めない方がいい

実家,空き家
一方で、水道については基本的に閉栓しないほうが良いとされています。
長期にわたり水道を止めていると、水道管がさびて破損したり、下水管の排水トラップ内の水が蒸発して悪臭が発生したりといったトラブルが避けられません。水を出すこと自体がメンテナンスになるので、月1回以上、1回に1分以上は水を出しっぱなしにして通水作業を行うのが理想的です。
なお、空き家を解体する予定の方は、水道管を維持するメリットもないので閉栓して差し支えありません。

また、必須ではありませんが火災や自然災害のリスクに備えて火災保険に加入すると安心です。万が一、放火などによる火災で隣家に被害が及ぶと、膨大な損害賠償が請求されることになるためです。

6-2.不用品を処分する

実家,空き家
空き家となった実家の不用品処分は、将来的に誰かが住む場合でも、売却などに踏み切る場合でも不可欠です。
不用品の分量や内容が自分たちで処理できる程度であれば、自治体のルールに従ってごみを分別し、処分します。時間と手間がかかりますが、費用を安く抑えることができます。

実家が遠路である場合や、手間や時間をかけられない場合は、空き家の片付け業者に依頼します。
複数の不用品回収業者に査定を依頼して費用を確認し、条件等に問題のない一社を選んで契約します。あとは日程調整を行い、当日作業後に精算すればよいので作業はとても簡便です。
空き家の不用品処分方法について詳細は、【空き家の不用品を処分する2つの選択・遺品整理業者の事例2つ】をご覧ください。

不用品の中には、ご自身で処分するのが難しい物も多く含まれています。
とくに処分しづらい物の一例として仏壇がありますが、遺品整理業者を利用することでスムーズに処分することが可能です。
仏壇の処分方法は【仏壇の処分方法5つと注意点―正しい流れと処分依頼先はココ】をご覧ください。

6-3.防犯対策をする

実家,空き家
空き家は不法侵入や放火の温床となるため、防犯対策が欠かせません。
不法侵入者の多くは、窓ガラスを破損して内鍵を解錠することによって侵入するため、空き家となった実家のすべての雨戸を、確実に閉めておきます。小窓にも、侵入防止格子を取り付けておくと安心です。

放火を防ぐためには、周囲をフェンスで囲って出入りできなくしたり、所有者・管理者を明確にして連絡体制を確立したりといった方策が有効です。

月1回程度の頻度で通うのが理想ですが、遠くて通えない場合には空き家管理サービスを利用するのも有効な選択肢です。【空き家の管理は月に1回30分・ポイントが分かれば自分でできる】をご覧ください。

7.実家が空き家になる前にできる対策

実家,空き家
親が元気なうちに家族で話し合って方針を決めておくのが、実家の空き家問題に対する最良の対策です。実家を売却・活用・相続するなどの意向を親に確認し、実家の相続人を遺言書に書き遺します。

話しづらい話題ではありますが、きちんと決めておければ、相続トラブルを回避することになります。

7-1.親が認知症になる前に話し合う

実家,空き家
認知症は70歳以上に多く発症しますが、徐々に進行していくため同居の家族であっても気づきにくい疾患です。
また若年性認知症にも注意が必要です。若年性認知症は、高齢者の認知症と比較して頻度は人口10万人あたり47.6人と非常に少ないものの、働き盛りの世代が脳梗塞や脳卒中などにより発症するケースが起きています。

親の定年や、親の親(つまり祖父母)が介護を受け始めたとき等、人生の節目を意識したタイミングで話し合うのがおすすめです。

7-2.介護施設に入所する時に話し合う

実家,空き家
親が自立生活を営めず家族の負担が大きくなったときや、専門的な介護が必要になったとき、介護施設への入所を検討する場合があります。

介護施設に入所すれば、今後実家に戻ることは考えにくく、実際にそのまま空き家になってしまうケースも存在します。施設入所のタイミングで実家の処分を決めておく、あるいは売却に踏み切るのは、有効な選択肢といえます。
ちなみに、親の施設入所を機に実家を売却する場合、条件を満たせば「空き家の発生を抑制するための特例措置」で売却時の譲渡所得から3000万円の特別控除が受けることが可能です。

7-3.「小規模宅地等の特例」を利用する

実家,空き家
小規模宅地等の特例とは、亡くなった人が住んでいた土地を一定の要件を満たす人が相続したときに相続税が最大80%現在される特例です。
実家の場合には特定居住用宅地等が適応され、亡くなった人が住んでいた宅地で、配偶者または一定の条件を満たす親族が取得した部分のことをいいます。

同居の子供でなくても持ち家に住んでいない子供であれば条件を満たせることがあります。例えば、相続人の中で賃貸住宅や社宅に住んでいるときには小規模宅地等の特例を利用できます。

この制度を利用できる相続人を実家に親が住んでいるときに決めて、不動産の相続人を遺言状に明記してもらうとスムーズに手続きが進みます。

実家の空き家問題に直面しないためには、実家に親が住んでいるときや親族間にトラブルが産まれる前に正しい知識を持って、話し合うことが大切です。

8.空き家となった実家の対処法

実家,空き家
空き家となった実家に対して、5つの選択肢が存在します。

8-1. 空き家になった実家を売却する

実家,空き家
慣れ親しんだ実家を売却するには心理的な抵抗もありますが,誰も住まなくなった実家の活用方法として売却は最も有効な選択肢です。賃貸活用や、実家を解体して更地を所有する場合に比べると、売却は費用や手間が少なく、低リスクの方法と言えます。

空き家や土地を所有している場合は毎年固定資産税がかかりますが、売却では譲渡所得として確定申告をすれば済みます。

相続した空き家を譲渡(売却)した場合、利益が出ても3000万円を越えなければ税金がかからない、3000万円の特別控除の特例が受けられる場合があります。詳細は国税局HP 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例をご覧ください。

この特例には期限があり、令和5年12月31日までの間に売却した場合に限られます。
都心や都市部の一等立地を除いて全国的に住宅価格の下落が予想されていることも鑑みると、住む予定のない空き家はすみやかに売却するのがおすすめです。

とくに地方では、土地の需要が低くて買い手を見つけづらいため、今後住む予定がないのであれば実家を相続した時や実家が空き家になったときから売却準備を進めましょう。

田舎の家の処分方法は【田舎の家の処分方法2つと処分できない時の対処法―どこに相談する?】をご覧ください。

8-2.空き家になった実家を賃貸活用する

実家,空き家
実家を手放さず、第三者に賃貸として貸し出す方法もあります。

賃貸活用は、家賃収入が得られるメリットがありますが、リフォームなどの初期投資必要であり、借り手がつかなければ収益が得られないことに注意が必要です。

実家が立地的に賃貸需要の見込める場所にある場合や、築浅で大幅なリフォームがいらない場合などには、積極的に検討することをおすすめします。
地方の物件は需要が低いので賃貸にも売却にも不利ですが、地方自治体の空き家バンクに登録すると地方移住希望者とのマッチングがしやすくなります。

親が介護施設に入所した時から賃貸物件に出すと、「貸付事業用」とみなされ、相続時に「小規模宅地等の特例」の対象となり、相続税を軽減できます。

8-3. 空き家になった実家を更地にする

実家,空き家
空き家を解体して更地にし、駐車場経営、事業用地などとして活用する方法です。
築30年を超えて老朽化していると、賃貸物件としての魅力が乏しいため更地活用が現実的です。
更地とすることで、用途の幅が広がり、管理費用や維持費が抑えることが可能です。
一方で、住宅がないため固定資産税が最大6倍に跳ね上がる点に注意します。賃貸活用と同様に、地方などで需要が見込めない地域では収益が満足に得られない場合もあるので、地域需要を十分に調査する必要があります。

空き家の解体には、80万円以上の費用が掛かります。
家の解体費用については【家の解体費用は80万円以上―内訳と10万円以上安くする3つの方法】をご覧ください。
空き家解体補助金を用意している自治体もあるので、空き家のある自治体のホームページを確認するようおすすめします。

8-4.維持管理して所有し続ける

実家,空き家
思い出と愛着のある実家を、親族などが集まれる場所として残しておくという選択肢です。将来的に、自分や親族が住む可能性がある場合にも有効です。

自宅の収納スペースが少ない場合は、トランクルームとして活用することもできます。
前述の「特定空き家」とされるような放置状態を避け、防犯のためにも、月1回程度は巡回する必要がありますが、自分たちで行うことができなければ、維持管理会社への依頼を検討します。
空き家の管理については【空き家の管理は月に1回30分・ポイントが分かれば自分でできる】をご覧ください。

8-5.自分・親族が住む

実家,空き家
幼いころより慣れ親しんだ土地に居住するという方法です。
コロナ禍でテレワークが一気に普及したため、都市部の会社に勤めている場合でも遠隔地の住居に住むこと可能になりました。空き家をセカンドハウスとして利用するのも有効です。
水回りや給湯器設備の交換費用など初期修繕費として100万円~2000万円の費用が掛かりますが、実家に愛着がある方にはおすすめの方法です。
自治体によってはリフォーム補助金や助成金制度が整えられているため、事前に確認することをおすすめします。

以上5つの選択肢をお伝えしましたが、空き家の活用方法について詳細は【空き家の活用方法と決められない時の解決策】をご覧ください。

実家が空き家になったときのまとめ

・空き家となった実家は、維持管理に労力と費用(年間20万円台~)を要する
・実家を放置し特定空き家に認定されると、税制上の不利や撤去費用負担がある
・空き家相続時は、資産価値や登記名義、敷地境界線を明確にする
・使い道のない空き家は売却処分や継続管理方法等を検討し、放置しないこと

以上、実家が空き家になった時のポイントと対処法をお伝えしました。
思い出深い実家の扱いを決めるのは難しい問題ですが、ご自身の状況に合った選択肢を取ることが、将来的な不安・負担の軽減になります。
テレビ洗濯機冷蔵庫マッサージチェアベッド学習机電子レンジ座椅子プリンター炊飯器物置消火器カーペット日本刀亡くなった方の布団自転車金庫カラーボックス衣装ケーススーツケース婚礼家具家財整理ぬいぐるみ物干し竿毛布食器位牌エレクトーン灯油家具扇風機ゴミ箱