ゴミ屋敷の原因は溜め込み症かも。捨てられない原因と効果的な治療方法
ゴミ屋敷になったのは本人のだらしなさが原因ではないこともあります。
先天的な特性、後天的な病気であることも考えられ、その中の一つが溜め込み症です。
この記事では溜め込み症の症状やリスクをご紹介します。
記事を読み終えると自分や家族の症状と向き合うことができ、ゴミ屋敷の解決へとつながることもあります。
【監修】遺品整理士協会認定 遺品整理士
片山 万紀子
祖父の遺品整理をきっかけに遺品整理や不用品回収に興味を持ち、遺品整理士協会認定・遺品整理士の資格を取得。ReLIFE(リライフ)のディレクターをする傍ら、年間600件以上の遺品整理に携わる。遺品整理を通して「ありがとう」という言葉をいただけること仕事のやりがいとしています。
溜め込み症とは
「溜め込み症」は大多数の人から見れば不要だと思われるものを集めて捨てられない症状のことを指します。また、集めたものを捨てることが苦痛なので部屋や家に物が溜まり続けてしまいます。
患者の数は「国民の2〜6%」と見積もられており、ゴミ屋敷の住人に共通する症状の一種でもあります。
溜め込むことが目的
物を集める、という意味では「コレクター」も似ているように感じますが、同じではありません。コレクターは自分の趣味に関する特定の物などを集めますが、溜め込み症の場合は、ほとんど価値がない物までも無秩序に溜め込んでしまいます。
溜め込む対象は、新聞・古雑誌・使わない家具・バッグ・服・電子機器・紙ごみなど人によって異なりますが、ゴミ同然と認識されるものが多いです。
中には「動物ためこみ」と呼ばれる症状もあります。大量の動物を飼ってしまうのですが、動物を溜め込むこと自体が目的になっているため、健康や衛生状態を管理することはできません。
捨てられない
溜め込み症になると、集めた物を捨てることに対して大きな抵抗感を覚えるようになります。
溜め込み症は10代のうちに発症し、10年ごとにゆっくり症状が悪化し徐々に生活に支障を与える疾患です。そのため、30代〜50代くらいで症状がより顕著になり、家族間や近隣で問題になります。
家族など周囲の人間からすると、明らかに使わない物を溜め込むことは無意味で不衛生ですが、本人からすると「これから使うかも」というように考えたり、愛着があったりするため、整理に同意してくれません。
床が物で埋まり、生活が困難なレベルに達するほどのゴミ屋敷になったとしても、その考えは変わらないのです。
実家がモノで溢れている場合は両親のどちらかが溜め込み症である可能性も考えられます。
実家が汚い時の対処法は【実家が汚いストレスと3つのリスク。すぐにできる2つの実家回避法】をご覧ください。
実家を片付けたい時は【実家の片付けの6つのコツと片付け業者を利用する目安】をご覧ください。
実家がゴミ屋敷状態の時は【実家がゴミ屋敷になった4つの原因と片付けるタイミング3つ】をご覧ください。
症状の理解と病院での治療が不可欠
この溜め込み症は精神疾患の一種です。「ホーディング障害」とも呼ばれ、強迫症に関連する症状として認定されています。2013年までは溜め込み症も潔癖症と同じように扱われ「強迫性障害」とされてきましたが、米国精神医学会がつくる精神疾患の国際的診断基準で別の病気と定義されてからは精神疾患として扱われています。ただし、溜め込み症の治療法は完全に確立されているわけではありません。
精神疾患であるため、周囲の人物が「どうして片付けないのか」など強い否定の言葉を使っても改善しません。まずは溜め込み症の症状を理解し、薬物療法やカウンセリングを活用した適切な治療を施すことが必要です。
薬物療法によって神経伝達物質に影響を与え、こだわりの強さを軽減したり、認知行動療法によって「物を捨てても大丈夫」という考え方を身につけさせたりすることはできます。
しかし、患者本人に「溜め込み症である」という自覚がないと効果がありません。
溜め込み症の治療には本人だけでなく周囲の人間の根気と時間が必要なのです。
溜め込み症の3つの症状
溜め込み症の症状について分かりやすい例を3つご紹介します。
1.モノを捨てるのが苦痛
先ほど述べたように、溜め込み症になるとあらゆる物を溜め込んでしまいそれを捨てることができません。収容するスペースがなくなり普段の生活ができなくなっても、それ以上に「溜め込んだ物を捨てる」ということに対する苦痛が大きくなってしまいます。
これは、捨てるという行為だけでなく「リサイクルに出す」「誰かに引き取ってもらう」という場合でも同じです。本人にとって使わない物でも、他の誰かにとっては必要な物であることもあります。その場合は引き取ってもらった方が良いのですが、使わない物であっても本人が「これを保管しておかなければいけない」という気持ちになっている以上、それをむりやり手放させることはできません。
「溜め込む」の反対にある「捨てる」行動は自分の一部が引き剥がされるような感覚になると言われています。
2.モノへの執着するのを制御できない
溜め込み症は「物を溜める」ということ自体が主な目的であるため、こうした無価値な物であっても執着してしまい溜めてしまいます。どんどんゴミが積み上がり、ゴミ屋敷のような状態になっても、その執着心を制御することができません。
溜め込み症患者が溜め込んでしまう物の中には、空き箱・紙ごみ・着ない服・空のペットボトルなど、明らかなゴミも含まれています。これらは使い道がなく本来捨てるべき物です。
周囲の人物がゴミであることを指摘したとしても、物への執着心を本人が意図的にコントロールできないというのが、溜め込み症本人をも悩ませる症状です。
ゴミ屋敷の心理については【ゴミ屋敷6つの心理状態とすぐにできる3つの解決方法―孤独・ストレス】または【片付けられない3つの原因とタイプ別解決策―共通点と病気の可能性】をご覧ください。
3.家にモノが溢れている
このように、溜め込み症になると物を手放すことに苦痛を覚え、ゴミなど使わない物にも強い執着心を持ってしまうため、家にあらゆる物が溢れるようになります。コレクターのように自分なりのルールに沿って物を集めているわけでなく、とにかく無秩序にあらゆる物が散らかっている状態です。
初期段階であれば、通常よりも物が散らかっている程度のため、生活にそこまで支障はありませんが、症状が末期になると文字通り足の踏み場もないくらい物を溜め込むことになります。トイレやキッチンなども物で埋まってしまうため、そうなると本来の目的のためにその場所を使うことはできません。
溜め込み症の3つのリスク
溜め込み症の症状を放置すると以下のようなリスクの発生率が高くなります。
1.ゴミ屋敷になる可能性が高い
溜め込み症が進行すると、溜め込む物やゴミの量が増えゴミ屋敷になる可能性が高いです。
少し散らかっているというレベルであれば、周囲の人物の協力も得て掃除をすることで、対処はできます。しかし、生活するのが困難なレベルまで物やゴミを溜め込んでしまうと、自力での片付けは難しくなります。溜め込み症ではものの一方通行が生まれやすくなるので、日に日にゴミが積み重なりゴミ屋敷のリスクも高まります。
さらに、ゴミ屋敷は火事にもなりやすいです。ゴミ屋敷には紙などの燃えやすいゴミも溜まっているため、タバコの小さな火種があるだけでも燃え広がります。とくにキッチンの近くに燃えやすいゴミがあると、コンロの火を使った拍子に燃え移り、あっという間に全焼することが多いです。
ゴミ屋敷のリスクは【ゴミ屋敷がコロナ禍で増えた。5つの原因と命に係わる3つのリスク】をご覧ください。
ゴミ屋敷の火事は【ゴミ屋敷が火事になる5つの原因と近隣のゴミ屋敷火災から自宅を守る対策】をご覧ください。
2.健康被害
溜め込まれたものの中には悪臭を放つ生ごみもありますし、害虫を呼び寄せることにもなります。
衛生環境が整っていない家は害虫にとって絶好の生活場所です。ゴキブリ・ハエ・ダニ・ネズミ・クモなどの害虫が発生し、チフス・赤痢菌・O-157など60種類以上もの菌を運んできます。住んでいるだけでアレルギーや身体的な病気にもかかりやすくなります。
床が見えなくなるほど高く積みあげられている場合にはつまずいたり、モノが倒れてきて怪我をする可能性も十分にあります。
内面も外見も健康被害が及ぶことになります。
3.家族や友人・地域からの孤立
溜め込み症を放置すると、家族や友人など近しい人物からと地域からの孤立も避けられません。
例えば、自分の親の家にゴミが溜め込まれていると、「不潔な感じがするからなるべく実家には帰りたくない」というように思います。とくに小さい子どもを育てている親であれば、子どもの健康が心配で、なるべくゴミには近づけたくありません。友人からしても、ゴミが溜め込まれているような家には招かれたくないと考えてしまいます。
夏場は食べ物が腐りやすいため3日程度でマンションの場合は隣の家、戸建ての場合は家の前まで臭いが届き、苦情やトラブルにも発展します。こうした事象が発生するとゴミ屋敷としてはかなり深刻です。
溜め込み症は精神的な疾患なので、本人の努力ではどうすることもできませんが、溜め込み症について理解がない場合や溜め込み症だと知らない方からはただのだらしない人と認識されてしまうことがあります。
ゴミ屋敷のリスクとトラブルは【ゴミ屋敷のトラブル事例と原因-住人の共通点・根本的に解決する】をご覧ください。
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溜め込み症は専門機関へ
このように、溜め込み症は深刻なリスクを抱えています。溜め込み症は精神的な疾患であるため、改善するためには然るべき場所で専門家に相談することが大切です。
精神科・心療内科
精神疾患である溜め込み症は、精神科・心療内科で治療を行います。本人の症状の進行具合に合わせて、適切に治療していくことが大切です。
物を溜め込むという行動は、鬱やADHDに見られる「ためこみ行動」と被ることがあります。この場合は、あくまでも鬱やADHDが主な精神疾患となるため、厳密には溜め込み症ではありません。
しかし、溜め込み症と鬱や気分障害、双極性障害などを併発しているケースもあるため、専門家ですら正確に判断することは難しいです。医師と本人との相性が長く続く治療をより効果的にしてくれます。1つの病院で納得がいかない時にはセカンドオピニオン、サードオピニオンとして治療方法や医師との相性がいい病院を探すのがおすすめです。
専門の医師の適切な治療
溜め込み症の治療法はまだ確立されていません。特定の抗うつ薬や認知行動療法を行うのがメインとなりますが、実際に効果が表れたのは患者の中の約2割程度と言われています。
また、先ほど述べたように、溜め込み症に関しては本人に改善する気持ちが生まれないと状況は変わりません。そのため、専門の医師と共に「物を捨てるための動機付け」を作っていく必要があります。
このように、溜め込み症の治療では、鬱や気分障害との区別もつけながら個人に合わせた適切な治療を丁寧に続けることが大切です。
医師への相談は家族からでも可能
溜め込み症の相談は、もちろん本人が医師に相談することが一番です。しかし、溜め込み症は患者本人に自覚症状が無いケースも多く、そもそも自分が精神的な疾患であると気づいていません。
その場合は、家族が相談をしても大丈夫です。あまりにゴミや物が溜め込まれているような状況になっていると気づいたら、早めに専門家に相談をしましょう。溜め込み症を発症したのは14歳以下が過半数を超えるというデータも報告されています。
ただし、家族に溜め込み症の可能性がある場合、勝手にその家にある物やゴミを捨ててはいけません。本人はその物に対して、自分なりの必要性を感じています。それを第三者が勝手に処分するというのは、溜め込み症患者本人を傷つけ、その後の関係が悪化することもあります。
溜め込み症は精神的な治療と周囲のサポートによって改善がみられる精神疾患とされています。
症状が改善したら部屋を片付ける
片付けを行うのは、溜め込み症の症状が緩和されてからです。患者本人が、物を片付けたり捨てたりすることに抵抗を感じなくなったら部屋を片付け始めます。
本人が捨てられるようになることが改善につながるので、可能であれば自分で進めた方がいいのですが、足の踏み場もないほどもので溢れているときには片付け業者を利用する選択肢もあります。
ゴミ屋敷化してしまった部屋を片付ける時は手順を守り、準備を入念に行うと片付けやすくなります。
ゴミ屋敷の片付け方は【ゴミ屋敷の片付けるマインドと費用―片付け業者に依頼すると10万以上】をご覧ください。
マンションの一室や自分の部屋だけの時は【汚部屋の片付けを成功させる3つのコツとリバウンドしない3つのルール】をご覧ください。
片付け業者に依頼すべきレベルは【汚部屋のレベルと女子に多い理由―病気になる前に片付ける方法】をご覧ください。
溜め込み症のまとめ
・溜め込み症は精神疾患の1つであり、専門医の指導の下治療を進めていく
・溜め込み症の患者は周囲から見ればゴミ同然のものを集め、捨てることに苦痛を覚える
・症状を放置するとゴミ屋敷化し、健康被害がある他に地域や家族、友人から孤立してしまうことがある
・溜め込み症の症状改善には本人の自覚と周囲のサポートが欠かせない
・症状が改善してから片付けを始めるとよく、ゴミ屋敷化しているときには片付け業者に依頼する選択肢もある
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