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ゴミ屋敷の法律はないけど条例で撤去できた2つの事例。警察は介入できない?

近所のゴミ屋敷をなんとかしたいけどどこに相談したらいいのか分からず、そのままにしている方も多いのではないでしょうか。
この記事ではゴミ屋敷に関する法律や自治体の条例とゴミ屋敷の撤去に成功した事例などをご紹介します。
記事を読み終えると近所にあるゴミ屋敷の正しい対処法が分かります。



【監修】遺品整理士協会認定 遺品整理士
片山 万紀子

祖父の遺品整理をきっかけに遺品整理や不用品回収に興味を持ち、遺品整理士協会認定・遺品整理士の資格を取得。ReLIFE(リライフ)のディレクターをする傍ら、年間600件以上の遺品整理に携わる。遺品整理を通して「ありがとう」という言葉をいただけること仕事のやりがいとしています。


ゴミ屋敷の直接的な法律はない

ゴミ屋敷,法律
2021年7月現在、ゴミ屋敷に直接に関わる法律は整えられていません。

条例として各自治体でゴミ屋敷を撤去できるようになってはいますが、法律と比べると効力は弱いです。ここからはゴミ屋敷に直接的な法律がない理由をご紹介します。

ゴミであっても資産とみなされる

敷地内にあるものはすべて家主の資産とみなされます。

食品や汚れたペットボトル、大量の紙袋など明らかにゴミであっても居住者本人が自分の持ち物であり、資産であると主張すると強制的に捨てることは法律上できません。
もし、家主の意向を無視して強制的にゴミを処理すれば、処理した側が「財産権を侵害した」ということになってしまい、罪に問われてしまいます。

ただし、ゴミが敷地内からはみ出しているときには適応できる法律もあります。

不法投棄への法律

ゴミ屋敷,法律
ゴミ屋敷の敷地からはみ出ている場合にはゴミの不法投棄とみなすこともできるので、廃棄物処理法に基づき対処できます。

不法投棄を罰する法律では
“廃棄物の処理及び清掃に関する法律第16条に「何人もみだりに廃棄物を捨ててはならない」”と規定されています。
不法投棄をした時には同法25条により、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはこの両方を科せられることになります。

ゴミ屋敷の敷地をはみ出していた分を不法投棄とみなされた場合には、住人が罪に問われることもあります。不法投棄を警察が捕まえるには「本人が故意に捨てた」という証拠が必要ですが、現実的には難しいです。

また、敷地内にあるゴミ屋敷には適応されません。

道路にゴミがはみ出しているときの法律

ゴミ屋敷,法律
交通の妨げになるのであれば、道路交通法違反となります。

道路交通法第5章第1節第76条では“交通を妨げるようなものは道路に置いてはいけない”と定められています。ゴミ屋敷の敷地を超えて道路までゴミが溢れ出し、車や人の交通を妨げている場合には道路交通法違反でゴミ屋敷の住人が検挙される可能性があります。

道路にゴミを置いて交通を妨げたことが罪であって、住人が検挙されてもゴミ屋敷自体を片付けることにはなりません。

ゴミを片付ける義務はある

廃棄物処理法では
“家庭(廃棄物処理法では「建物の所有者又は占有者」)は、自己の土地建物を清潔にし(廃棄物処理法第5条第1項)、自治体のルールにしたがってゴミを出す(廃棄物処理法第2条の4)”
という義務が書いてあります。

これは自分の敷地内で出たゴミは自治体のルールに従って、分別し、収集日や収集時間を守って出しましょうという意味の法律です。義務ではありますが、守らなかったとしても罰則や罰金などはありません。

ゴミ屋敷の住人が「ゴミを処分する努力をしている」と言えば義務を果たしていると言えます。ゴミの定義があいまいなこともゴミ屋敷が撤去できない原因の一つです。

ゴミ屋敷に対処できる条例

ゴミ屋敷,法律
住人の苦情となっているゴミ屋敷に対処できる条例を定めている自治体もあります。

ゴミ屋敷に関する条例は自治体で独自に設けられているので多少内容は異なりますが、基本的に以下の3つをゴミ屋敷条例に入れている自治体が多いです。

1.住民に対する改善指導
2.住民の氏名公表
3.ゴミの強制撤去

ここからは、ゴミ屋敷に関する条例の具体的な内容について解説していきます。

住民に対する改善指導

ゴミ屋敷,法律
ゴミ屋敷の家主に対して、自治体の職員が改善指導を行うことから始めます。この改善指導は、数回では終わりません。過去に、強制的なゴミ処理が行われた京都市では、120回以上自宅を訪問し指導を行っていました。

月に1回以上の念入りな指導を行ったにも関わらず、家主が対処をしなければ次の段階に移ります。

ゴミ屋敷条例では行政代執行ができると定めていますが、すぐにゴミ屋敷の撤去がされるわけではありません。法律では敷地内のモノはゴミであっても家主の資産とみなされているからです。

処理した側が法律違反とならないように、交渉の履歴や段階を踏んでゴミ屋敷の撤去や改善を進めていきます。

住民の氏名公表

改善指導を行ったにも関わらず、対処をしている様子が見えない場合は、家主の氏名が公表されます。

氏名の公表は、中野区・横須賀市・神戸市など、多数の自治体で規定されているものです。神戸市では氏名の公表に加えて罰金も課されていますし、2018年には横須賀市で実際に氏名が公表されています。

氏名の公表を行う前にも何十回と改善命令や勧告を出しているので、氏名の公表までも1年以上かかることもあります。

ゴミの強制撤去

勧告や改善命令を無視し続け、ゴミ屋敷の片付けが進んでいないと判断された時に最終手段として行われるのがゴミの強制撤去です。強制であるため、家主の意思は関係ありません。

清掃業者を使用する場合もありますが、過去の例では自治体の職員が行っています。行政代執行によって発生するゴミ処理の費用は、家主の負担となりますが、足立区など一部の自治体では、ゴミの撤去にあたり補助金が出ます。

条例では効力が弱いので、勧告から強制撤去までは5年以上かかることもよくあります。

条例のある地域

自治体レベルで「ゴミを強制撤去できる条例」の制定が進められています。

あくまでも一例ですが、現在ゴミ屋敷関連の条例を制定しているのは、以下の市区町村です。
・東京都→新宿区、豊島区、荒川区、足立区、世田谷区
・埼玉県→八潮市、草加市
・神奈川県→横須賀市、鎌倉市、横浜市
・愛知県→名古屋市、豊田市、豊橋市、蒲郡市
・京都市

公益財団法人日本都市センターの調査では、全国に370ある自治体の中で、ゴミ屋敷問題に悩まされている自治体は「216」あるという結果が出ています。全国の自治体のうち、約6割がゴミ屋敷の対処に手間取っているということです。

このゴミ屋敷に関する条例には「行政代執行」という項目が定められています。行政代執行とは、国や役所からの複数回におよぶ通告を無視し続けた人物に対して、強制的に業務を執行することをいいます。

ゴミ屋敷に関する条例があれば、自治体に相談することで対処してもらえます。

条例によるゴミ屋敷撤去の事例2つ

自治体が定めている条例によってゴミ屋敷の強制撤去が行われた事例を2つご紹介します。どちらも撤去までには時間をかけて職員の根気強い説得の末に行われました。

ゴミ屋敷の条例があっても撤去までに時間がかかりますし、住人と職員の根気が必要です。

京都のゴミ屋敷撤去事例

ゴミ屋敷,法律
ゴミ屋敷の行政代執行は2015年の京都府で初めて行われました。

木造2階建てのアパートの1室が近所でも有名なゴミ屋敷となり、2009年に住人から市役所へ相談が入り、120回以上の訪問や指導がされていました。2012年には道路法に基づき、道路にはみ出ていた部分のゴミは撤去されましたが、一時的な物でした。

片付けが終わった後からゴミ屋敷の住人は新しいごみを持ち込むことを繰り返していたので、2015年の条例が制定された後で行政代執行が行われました。

職員5名で、部屋の前の私道に積み上げられたゴミと、ベランダに溜め込んだゴミを撤去したところ45リットルのゴミ袋が167袋分の総量となりました。ゴミの処分は近隣住人に影響があった道路とベランダ部分だけでしたので、室内にはまだゴミが残っていると予想されます。

また、根本的な原因が解消されない限り、ゴミ屋敷に戻ってしまうこともよくあります。

横須賀市でのゴミ屋敷撤去事例

ゴミ屋敷,法律
2018年8月28日、横須賀市は神奈川県内で初めてゴミ屋敷への行政代執行が行われました。

条例に従って、市の職員が100回以上ゴミ屋敷への訪問や勧告をしていても片付けに応じなかったのでまずはゴミ屋敷の氏名の公表がされました。氏名の公表と同時に片付け期限を通達しましたが、変化がなかったとのことでゴミの強制撤去となりました。

京都市と同様に家の外から見える部分だけの片付けとなったため、室内にはまだ大量のゴミが残されているでしょう。ゴミ屋敷に関する法律がない以上、室内にあるゴミの山は住人の資産との見解が強いです。

近隣に迷惑をかけていないとされる室内のゴミを改善するには法律が必要になります。

条例で近所のゴミ屋敷を撤去する流れ

ゴミ屋敷,法律
近所にあるゴミ屋敷を撤去する流れをご紹介します。この方法はゴミ屋敷に関する条例がある地域に限りできる方法です。

1.役所への相談

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自治体側の判断で、勝手に強制執行することはありません。まずは、近隣住民が役所へ相談することから始まります。

ゴミ屋敷に関する相談は、自治体の専用窓口で受け付けています。事前に電話で自治体に問い合わせておく、というのも一つの手です。

相談をするときは、以下の情報をまとめておくと、スムーズに現状を伝えられます。
・具体的にどのような迷惑を被っているか?
・現場の写真
・近隣住民からの要望
・(可能であれば)近隣住民の署名

上記の相談内容をもとに、自治体の職員がゴミ屋敷の現場を訪れ、現在の状況を直接確認します。

この段階を無視して、近隣住民から直接ゴミ屋敷の家主に苦情を入れてしまうと、暴力沙汰など大きなトラブルに発展するため要注意です。

ゴミ屋敷の家主は、自治体の職員が行う立ち入り調査を、拒否することができませんし、質問にも正確に答える必要があります。

2.片付けの支援・指導

ゴミ屋敷に関する相談を受けて実地調査を行い、その結果を受けて、行政が片付けの支援や指導を行っていきます。

支援や改善指導は数回では終わりません。

ゴミ屋敷に溜まっているものは、あくまでも「家主の資産」です。そのため、なるべく強制撤去を行わなくて済むように、最大限まで家主への支援が行われます。

指導や勧告の内容としては、口頭や文面によって通告を行う、というのがメインです。この段階で、指導に従い、きちんとゴミを片付ければ強制撤去は行われません。

ゴミ屋敷の住人への支援

必要に応じて、家主への支援も行われます。この支援はゴミ屋敷の住人が根本的に解決できるように自治体によって独自に決められています。

主に以下のような支援が行われます。
・ゴミの撤去に必要な費用の補助
・家主との個別面談
・家主へのカウンセリング

ゴミ屋敷になってしまう人の中には「寂しさを埋めるためにゴミを溜めている」「強迫観念に駆られ、ゴミを捨ててはいけないと思い込んでいる」など心のケアが必要です。また、貧困が原因になっているときには生活保護の提案も行っています。

ゴミ屋敷の住人の心理状態は【ゴミ屋敷6つの心理状態とすぐにできる3つの解決方法―孤独・ストレス】をご覧ください。

3.ゴミ屋敷の強制撤去

自治体によっては、指導や勧告を受けても改善されない場合、さらに強制力がある「命令」が下されます。氏名の公表をされることもあれば、先ほどの神戸市のような罰金を課している自治体もあり、かなり強めの措置です。

こうした度重なる指導・支援・命令を行っても、状況が良くならない場合、最終手段としてゴミの強制撤去が行われます。

行政代執行が行われたケースとして代表的なものは、以下の事例です。
・2015年に京都市で行われた行政代執行。2009年に住民からの相談で発覚し、強制撤去までの1年間で、100回以上の訪問と60回近い面談が行われた。

・2018年に横須賀市で行われた行政代執行。同年4月に施行されたゴミ屋敷に関する条例をもとに、100回近い指導が行われたが改善されず、同年8月に強制撤去された。

いずれのケースでも、半年以上かけての指導が行われています。

ゴミ屋敷の条例がない地域での相談先3つ

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条例がない自治体でも自治体や公的機関、管理会社に相談すると対処してくれることもあります。ここからはゴミ屋敷条例がない地域での対処方法をご紹介します。

1.役所に相談

ゴミ屋敷に関する条例が制定されていなければ、行政代執行にもとづく強制撤去はできません。しかし、住民からの相談なので、厳しめの指導や命令はできなくても何らかの対応はしてくれます。

対応の内容は、自治体によって異なります。ゴミ屋敷の訪問を行い住人を説得してくれる役所もあれば、ゴミ屋敷の家主や家族などに対して、専門の清掃業者を紹介してくれるところもあります。

ただし、自治体によっては大きなトラブルを嫌い、対処してくれないこともあるので根気強く連絡することが必要になります。

2.マンションの場合は管理会社へ相談

マンションに住んでいる場合は、まず管理会社や大家へ相談します。

ゴミ屋敷の家主も、住居を管理している人物から意見を言われれば、無視はできません。もちろん、ゴミが家主にとっての資産であるという前提は変わらないため、管理会社から意見を伝えたら必ず解決するわけでもありません。

しかし、直接苦情を伝えるよりも、対処してくれる可能性は高まります。

3.警察や消防署に共有

ゴミ屋敷,法律
警察には民事不介入の原則があるため、直接取り締まることはできません。ただし、警察によっては、家主への注意程度であれば動いてくれるケースもあります。

消防署への共有は、火災被害のリスクを減らすことに対して有効的です。ゴミ屋敷には、さまざまなゴミが溜まっています。紙などの燃えやすいゴミも大量にあるため、小さな火種でも大きな火事になるリスクが高いです。

事前にゴミ屋敷の場所を共有しておくことで、普段からその地域に気を配ってもらえる上に、消防署側から火事のリスクを伝えることもできます。

警察や消防署に相談することで、直接ゴミへの対処はできなくても、事態が悪化しないように導くことはできるのです。

ゴミ屋敷の火事は【ゴミ屋敷が火事になる5つの原因と近隣のゴミ屋敷火災から自宅を守る対策】をご覧ください。

警察が動くケース

ゴミ屋敷,法律
ゴミ屋敷に対して警察が動いてくれる2つのケースをご紹介します。

ゴミ屋敷の住人から暴力を振るわれた

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ゴミ屋敷の家主が「近隣住民とトラブルになり暴力を振るった」という事態になれば、暴力事件として取り扱うことはできます。しかし、それはあくまでも暴力行為への対処に過ぎず、ゴミ屋敷問題を解決できるわけではありません。

ゴミ屋敷に不審物がある

ゴミ屋敷の中に違法薬物が隠されていたりや遺体や行方不明者が監禁されているなど事件に関わる可能性があれば、警察が家宅捜索することもあります。

家宅捜索は十分な裏付けをとった上で行われるので、うわさや悪臭程度では動いてくれる可能性は低いです。家宅捜索をしてもなにも疑わしいものが出てこなかった時には、警察がゴミ屋敷の住人に名誉棄損で訴えられてしまうこともあります。

また、家宅捜索ではゴミ屋敷を片付けるのではなく不審物を探すことが目的ですので、ゴミ屋敷を片付けることにはなりません。

ゴミ屋敷に関する法律ができる可能性は高い

ゴミ屋敷,法律
2021年7月現在ゴミ屋敷に関する条例しかありませんが、今後法律ができる可能性は十分あり得ます。ゴミ屋敷を取り締まる法律ができる可能性についてご紹介します。

ゴミ屋敷が増えている

2020年3月ごろからは新型コロナウィルスの影響もあり、ゴミ屋敷は増え続けています。
感染拡大防止のために出された緊急事態宣言のあとからは、特別な用事がなければ人と会わない生活が当たり前に変化しました。例えば、会社勤めの方であればリモートワークが主流になり週に1回程度の出勤へと変わったので、ゴミ出しの時間に間に合わず溜め込んでしまう方も増えています。

ゴミ屋敷の住人の割合年齢は65 歳以上が46.9%である一方、40代~ 64 歳も32.8%と着実に増加しています。

また、ゴミ屋敷の原因には認知症や身体的な不具合が原因になっているケースもあります。高齢化が進む中でゴミ屋敷は今後も増えることが予想されるため、法律による取り締まりが必要と考えられます。

条例には限界がある

条例は自治体が独自に決めているものなので、効力も弱くゴミ屋敷の撤去まで時間もかかります。

担当する職員の知識や熱意によってもゴミ屋敷への対処が異なることも課題の一つです。条例すら制定されていない自治体では担当部署が曖昧なので、住人の要望をたらいまわしにされたりすることもあります。

ゴミ屋敷の増加や自治体の限界を考えると、有識者がゴミ屋敷の法律を定めて、行政や警察など公的機関が一丸となって動けるように法律を作るべきとも言えます。

ゴミ屋敷の法律についてのまとめ

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・ゴミ屋敷に直接的に対処できる法律はない
・敷地内にあるものは例えゴミであっても住人の所有物で資産とみなされる
・廃棄物処理法や道路交通法に関する法律はあるが、ゴミ屋敷の撤去ができるものではない
・ゴミ屋敷に関する条例がある自治体では、最終的に行政代執行でゴミ屋敷を片付けられたこともある
・過去の例をみるとゴミ屋敷の撤去には3年以上時間がかかった
・警察は民事不介入の原則からゴミ屋敷の片付けには関われない
・近隣にあるゴミ屋敷は自治体や管理会社、警察、消防に知らせておくことが有効な手段
・ゴミ屋敷が増えていることや高齢化社会に備えて、今後ゴミ屋敷を対処できる法律ができることが予想される

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