廃学校を生まれ変わらせるリノベーションの力
日本ではおおよそ30年前ほど前から少子化が進行しています。近年では深刻な少子化の影響で、過去20年間で約7,000以上もの学校が廃校になっています。
少子化による統廃合の結果、廃校になった学校の校舎のほとんどは、長い間取り壊されずにそのままの姿で取り残されています。
そんな校舎を活用するための方法として、最近では廃学校を商業施設などにリノベーションし利用する事例が増えています。
この記事ではその事例をご紹介しますので、実際に施設に足を運んでみたり、ご自宅のリノベーションにも活かしていただけると嬉しいです。
目次
廃学校を生まれ変わらせるリノベーション
廃校になった校舎のリノベーションと聞いて、東京の旧四谷第5小学校に移転した「吉本興業東京本社」の新社屋をイメージした人は多いでしょう。
メディアなども取り上げていて、校舎の造りを活かしたオフィスや稽古場はとても素敵ですよね。
黒板、ロッカー、体育館や廊下など学校ならではのモノをそのまま残したリノベーションをすることにより、コストを抑えながら、どこか懐かしい気持ちにもさせてくれるのが廃学校リノベーションの良さと言えるでしょう。
「通った頃の思い出がたくさん詰まっている校舎を残したい。」
「廃校舎を地域活性化などの目的に使用したい。」
というニーズとも合致したリノベーションが廃学校リノベーションです。
お住いのリノベーションと同じように、通っていた人(今まで使っていた人)、これから使う人のためのリノベーションとも言えますね。
廃学校を生まれ変わらせるリノベーションで宿泊施設に
ここからは廃学校を宿泊施設にリノベーションした例をご紹介します。
どの施設も、「学校らしさ」と「居心地の良さ」を両立させたリノベーションを行っており、お住いのリノベーションにも活かせる点は多いのではないでしょうか。
かたくりの宿/新潟県
http://www.tsumari-artfield.com/katakuri/ (公式 )
新潟県津南町ににある「かたくりの宿」は日本の秘境百選である秋山郷の入り口に位置する交流型の宿泊施設です。
平成4年に廃校になった「結東小学校」をリノベーションした施設で、宿泊するお部屋にも「1組」「2組」などのような名前がついています。
何よりも、古めかしい校舎の外観をそのままにしたリノベーションが素敵な宿泊施設ですよね。
校内も、ここが学校であったことを示す沢山の工夫がなされています。下駄箱も学校にあるようなものを採用し、グラウンド、体育館も活用されています。
あくまでも学校であったことを活かすような外観を活かしたリノベーションと間取りが特徴と言えるでしょう。
大三島ふるさと憩いの家/愛媛県
https://www.ikoinoie.co.jp/ (公式)
「大三島ふるさと憩いの家」は愛媛県今治市大島町にある、海と山に囲まれた自然豊かな宿泊施設です。
こちらの特徴は、必要最低限のリノベーションしかしていないという点です。
教室を区切り、畳敷きの客室にしたり、シャワーなどを取り付ける以外に、ほとんど手を加えず、当時の学校の姿のまま営業しています。
長い板張り廊下もそのまま残されており、どこか懐かしさを感じさせる引き戸の部屋入り口に教室がそのまま残ったお部屋など木造校舎の良いところがふんだんに散りばめられています。
私たちの住まいのリノベーションで活かせそうなポイントは、「最低限のリノベーションでも効果は十二分にある」ということでしょう。
ほとんど手を加えていないにも関わらず、当時の面影を残しながら、レトロなおしゃれさと懐かしさを両立している宿泊施設ですね。
廃学校を生まれ変わらせるリノベーションで商業施設に
ここからは廃学校を商業施設にリノベーションした例をご紹介します。
昔、教育が行われていた場所を今では様々な人の交流の場に変えたり、そこからイノベーションを起こしたり…廃学校のリノベーションによって様々な化学変化が起きている様子を知っていただけたらと思います。
お近くにこのような施設がある場合足を運んで実際に見てみるのも良いと思いますよ。
3331 Arts Chiyoda/東京都
https://www.3331.jp (公式)
「3331 Arts Chiyoda」(アーツ千代田3331)は東京都千代田区にある、文化芸術施設で、秋葉原駅から徒歩15分という好立地に位置する「21世紀型オルタナティブ・アートスペース」です。
外観は2005年に廃校した千代田区立練成中学校の校舎そのままですが、一歩足を踏み入れると、おしゃれなカフェやオフィスが点在しており「学校もここまで変わるのか」と思ってしまうほどです。
アートギャラリー・カフェ・オフィスなどが地下1階〜地上3階まで入居しており、文化的活動の拠点としても利用されています。
大きく姿を変えたような練成中学校の校舎ですが、様々なスペースの床材は学校の当時のままだったり、ウッドデッキや広場を利用しているお子さんや親御さんがいたり、はたまたフリースペースを利用して勉強をしている小学生がいたりと、人々の憩いの場になっていることは間違いありません。
リノベーションのポイントは、テナント等が使いやすいように学校の外観や最低限の床や壁を残しているところですね。
道の駅 保田小学校/千葉県
https://www.michi-no-eki.jp/stations/view/7991 (公式)
「道の駅 保田小学校」は千葉県安房郡鋸南町にある都市交流施設・道の駅です。名前から分かる通り、2014年に廃校となった「町立保田小学校」の校舎を利用しています。
学校らしく懐かしの食堂メニューの提供をする食堂や、カフェ、体育館を利用した地元の特産物直売所、宿泊施設、温泉まで併設されています。
こちらの施設は『守る、育てる、伝える、里山広場』を合言葉に鋸南町の地域活性化拠点になっています。
様々なイベントも開催しており、合言葉にぴったりの憩いの場になっており、メディア等からも取り上げられることも多く、町の宣伝役としても機能しています。
学校が再現された宿泊施設や、給食が再現されたようなメニューは足を運びたくなりますね。
リノベーションのポイントは、計画的に拡張性を持ったリノベーションをしていたことでしょう。全体的にどのような用途で教室を使うかを緻密に考えてリノベーションを進めていたからこそ様々な施設を校内に内包することができたのだと思います。
廃学校を生まれ変わらせるリノベーションから学べること
私たちの住まいについて、廃学校のリノベーションから学べることは「素材の魅力をしっかり活かす」ということではないでしょうか。
最低限のリノベーションで学校の魅力を最大限に引き出している施設もあれば、外観を利用し中身を大胆にリノベーションしてしまっている施設もあります。
しかし、いずれにしろ「廃校」という素材を最大限活用したリノベーションとなっているのは間違い無いですよね。
私たちの住まいのリノベーションについて考えるときも、今のお住まいを「素材」にしてどのように考えていくかが重要になると思います。
最低限のリノベーションでも大きな効果がある場合、大胆にリノベーションをして間取りまで変える場合…
廃学校のリノベーション事例から学べることはまだまだ多そうですね。
廃学校を生まれ変わらせるリノベーションでみんなの学びの場は憩いの場に
少子化の影響で廃校になった学校はリノベーションによって姿を変え、宿泊施設・商業施設などといった皆の憩いの場へ姿を変えています。
デザイン面での「学校らしさ」を活かしたり、グランドや教室といった「学校の機能」を活かしたり、そのリノベーションについては様々でしたね。足を運んでみたくなるような施設もたくさんありました。
廃学校に新たな命を吹き込むリノベーションの力に驚いた方もいるかと思います。
もちろん、他にも様々な廃学校は醸造場や福祉施設などに生まれ変わっていますので、それについてご自身で調べてみてもいいですね。