遺品整理の際、部屋がゴミ屋敷だった時はどうすればよい?住民不在のゴミ屋敷への対処法を完全解説!
故人の品物を分配する「遺品整理」は、思い出を保管するためだけでなく、遺産相続の準備としても重要です。
しかし、家がゴミ屋敷状態であれば、スムーズな遺品整理はできません。そのような状況に対応できるよう、この記事では、ゴミ屋敷の清掃を含めた遺品整理の手順等について解説していきます。
【監修】遺品整理士協会認定 遺品整理士
片山 万紀子
祖父の遺品整理をきっかけに遺品整理や不用品回収に興味を持ち、遺品整理士協会認定・遺品整理士の資格を取得。ReLIFE(リライフ)のディレクターをする傍ら、年間600件以上の遺品整理に携わる。遺品整理を通して「ありがとう」という言葉をいただけること仕事のやりがいとしています。
遺品整理とは
「遺品整理」とは、故人が生前に使っていた品物を、丁寧に整理していく作業のことをいいます。
遺品整理の対象となる品物はさまざまです。家具・貴重品・洋服・食器・日記・アルバムなど、幅広い品物を整理する必要があります。
これらの品物を確認して、使えるものがあれば引き継ぎ、故人の思い出の品があれば確保しておきます。
故人のゴミや不用品がある場合は、それらも整理しなければなりません。そのため、家がゴミ屋敷状態になっていると、それだけ整理に手間がかかります。
遺品整理では、こうしたゴミも含めて、どのように処理するのかを決めていきます。
遺品整理の残置物処分手順
故人の自宅にある遺品は、残置物として扱われます。この残置物は、所有者や相続人の許可なく処分できません。
そのため、相続人同士で話し合い遺品整理をして、残置物を処分する必要があります。
この残置物処分は、以下の手順で行います。
遺品整理の取り仕切る者を決める
遺品整理は、単なる片付けではありません。ゴミなど不用品の処分も含まれますが、形見分けなどで資産価値のある品物を引き継ぐ場合、遺産相続にも関わってきます。
そのため、相続権のある人物の中から、取り仕切る人物を決めておきます。個人の勝手な判断で、品物を捨てたり割り振りしたりするというのは、トラブルのもとです。
全員で確認しながら、相続するものとしないものを決めていくことで、そうしたトラブルを回避できます。
もし、相続放棄を考えている方がいれば、遺品整理に参加してはいけません。なぜなら、遺品整理に参加した時点で、相続を承認したとみなされるためです。
遺品の形見分けを行い残置物を決める
遺品整理をする人物が決まったら、形見分けを行います。故人の遺した品物を確認しながら、相続人や親族、友人などで分配します。
遺品は、そのまま渡すのではなく、ある程度手入れをした状態で分配すると丁寧です。例えば、衣類ならクリーニングをしておき、アクセサリー類なら汚れを拭き取っておくなどしておきます。故人の遺言に形見分けについて記載されていれば、その遺志を尊重します。
宝石や貴金属類など、資産価値があるものに関しては、遺産相続の対象です。間違えて分配しないように、あらかじめ別で分けておき、改めて話し合う方が安全です。
こうして形見分けが終わったら、残置物がはっきり決まります。
残置物の処分方法を決める
残置物が決まったら、それの処分方法を決めていきます。以下の方法で処分するとスムーズに進みます。
①通常のゴミとして処分する
日常で出たゴミは、各自治体の規定に沿って処分します。粗大ゴミの処分に関しては、自治体ごとに予約方法などが異なるため、事前確認が必要です。
②リサイクルショップやフリマアプリで売却する
残置物の中には、少額でも換金できる品物が混ざっています。遺産相続するほどでもないが、多少は換金できる品物があれば、活用するのも一つの手です。
③家電量販店に引き取りを依頼する
家電リサイクル法により、冷蔵庫・テレビ・洗濯機などの家電は、粗大ゴミに出せません。家電を扱う小売店に処分を依頼します。
④地域の処理センターに持ち込む
地域によっては、ゴミ処理センターが設置されています。処理の依頼方法は地域によって違いますが、予約不要な場所もあるので、ゴミを積める車両がある方は活用してください。
⑤不用品回収業者に依頼する
不用品回収業者であれば、24時間いつでも対応しているところが多く便利です。買取も行っているため、一気に残置物を減らせます。
処分や清掃を遺品整理業者に依頼することもできる
すべての品物を処理したら、最後に部屋の清掃を行います。その家が賃貸であれば、受け渡し前にキレイにしなければなりません。相続の対象であっても同様です。
このような遺品の処分やゴミの清掃は、自分たちで取り組むのがベストです。しかし、ゴミ屋敷状態であれば、手間がかかるためできません。その場合は、遺品整理業者に依頼することも視野に入れます。
遺品整理がメインですが、簡単な清掃や、追加オプションでハウスクリーニングにも対応してくれます。実際の現場を見て、自分たちで処理するのが困難であれば、遺品整理業者を活用することもオススメです。
住民不在のゴミ屋敷のリスク
このように、遺品整理では丁寧に品物を仕分け、必要に応じてゴミ処理も行います。とくに故人の自宅がゴミ屋敷状態なのであれば、早めに部屋を片付け、遺品整理を行わなければなりません。
なぜなら、住民不在のゴミ屋敷には、以下のリスクがあるためです。
防災性の低下
住民不在ということは、空き家同然です。遺族が定期的に手入れをできれば良いですが、それができないと、家自体が徐々に劣化していきます。
とくにゴミ屋敷には、大量のゴミがあるため、長年のカビやホコリが原因でさらに劣化が早まります。そのまま放置すると、部屋の壁が朽ちたり、悪臭が染み付いて取れなくなったりするという事態が避けられません。
場合によっては、わずかな火種で火事になることもあります。紙ゴミなどに引火すれば、被害は近隣住民にまで広まります。
防犯性の低下
空き巣にとって、住民不在の家は格好の獲物です。きちんと管理されていないとわかれば、盗みに入られてしまいます。
ゴミ屋敷にある大量の物の中には、金目の物が混ざっていることもあります。そうしたものを狙われてしまうのです。
他にも事例としては「放火」「詐欺グループの拠点にされていた」「人骨が遺棄された」など、さまざまな犯罪が行われたケースがあります。
住民不在の場所で何かをしていても、周囲から気付かれにくいです。そのため、このような犯罪行為が発生しやすくなります。
ゴミの不法投棄
ゴミが大量にあるのをいいことに、無関係の物まで不法投棄されてしまいます。ゴミ屋敷に他人の不用品が投げ込まれても、気付くのは困難です。
気付かずに放置してしまうと、他人のゴミが増え、ゴミ屋敷の度合いがさらに進行してしまいます。こうなってしまうと、いざ片付ける場合に手間がかかります。
自分たちのものではないゴミまで、お金を払って処理することは避けたいです。そのためには、速やかにゴミを片付け、不法投棄させない環境を作っておくことが欠かせません。
近隣への衛生環境の悪化
ゴミが溜まると、悪臭が漂い、さまざまな害虫が発生し始めます。発生する害虫は、ハエ・ネズミ・ゴキブリ・ダニ・アシダカグモ・ノミなどです。
食べ物があり、暖かい寝床があるゴミ屋敷は、こうした害虫にとっては最高の居場所です。年数を重ねるほど、害虫にとって住みやすい場所になってしまいます。
これらの害虫は、O-157・チフス・赤痢菌・黄色ブドウ球菌・アレルギーなど、さまざまな病原菌を媒介します。そのため、ゴミ屋敷の家主だけでなく、近隣住民の健康にまで影響を及ぼすのです。
風景・景観の悪化
ゴミ屋敷は景観を悪化させるものです。閑静な住宅街や自然が多い場所に、ゴミが大量に積まれた家があると、悪い意味で目立ってしまいます。
そのような景色が身近にあるというのは、近隣住民にとって不快です。「ゴミが好きなので毎日見たい」と思う方はいません。
その周辺が観光地であるならなおさらです。ゴミ屋敷があることで、せっかくの美しい景色が台無しになります。
このように、住民がいないゴミ屋敷は、景観を損ねるだけでなく健康被害や治安の悪化も引き起こします。放置しておいても良いことはないため、早急に処理しなければなりません。
業者に依頼するメリット
遺品整理をスムーズに行うためには、上記のようなゴミ屋敷状態から脱しなければなりません。自力での片付けが難しいほどにゴミが溜まっているのであれば、遺品整理や清掃の専門業者に依頼をしましょう。
短時間で片付く
ゴミ屋敷の片付けを自力で行うためには、根気と時間が必要です。大量のゴミを仕分けして外に運び出すという作業は、慣れない方が行うとかなりの重労働です。ゴミの量が多ければ、すべてを片付けるのに数日かかってしまいます。
専門業者は、大量のゴミの片付けを何回も行なってきたプロです。そのため、遅くても1日程度あれば、すべてのゴミを処理できます。
ゴミ屋敷の片付けは、あくまでも遺品整理前の準備にすぎません。メインである遺品整理の時間を確保するために、プロの手で時間を短縮することも大切です。
不用品の買取も可能
専門業者の中には、不用品の買取を行なっているところもあります。ゴミ屋敷の片付けをする中で、買取できそうな品物があれば、その場で買い取ってくれます。すぐに換金してくれる業者も多いため、ゴミ屋敷の清掃費用を節約できて便利です。
ただし、あまりにも高価な品物が見つかった場合は、安易に買取してもらってはいけません。先ほども述べたように、資産価値があるものだと遺産相続の対象となります。相続人とも確認し合いながら進めると、あとからトラブルになりません。
必要なものを探し出してくれる
遺品整理には、故人の通帳・クレジットカード・保険の契約書・不動産関係の書類なども含まれます。このような権利関係もきちんと手続きをしなければなりません。
しかし、故人がどこに保管しているのかを、把握できていないこともあります。そのような場合は、専門業者に見つけてほしい品物を伝えておくことで、探しながら片付けてくれます。
見つけてほしいものをわかる範囲でリストアップしておくと、当日の片付けがスムーズです。リストアップした以外の品物が見つかることもあるため、現場に立ち会いその都度確認しておきます。
なるべく費用を抑える工夫
専門業者に依頼することで、手間は省けますが費用はかかります。負担を少なくするための方法として、以下があります。
自分でできる粗大ゴミやゴミ出しは済ませる
すべてのゴミ処理を業者に任せると、それだけ費用がかかります。そのため、日常ゴミや粗大ゴミなど、自分たちで片付けられるものは事前に捨てておきます。
量にもよりますが、ペットボトルゴミ・空の弁当箱・紙類などは、簡単に分別可能です。
とくに生ゴミは、害虫にとっての餌場です。これ以上繁殖させないよう、業者による片付けを待たずに処理をしておきます。
粗大ゴミは、運び出すのに時間がかかるため、当日の時間をさらに短縮するためにも事前に処理しておきます。
処理費用も粗大ゴミの方が安いです。業者に回収してもらうと、2千〜5千円ほどかかるのに対し、自治体によっては数百円で粗大ゴミを回収してもらえます。
混雑する曜日や日程を避ける
日中働いている方が多いため、業者への依頼は「土日祝日」に集中しがちです。そのため、業者側もなるべく売り上げを伸ばせるように、追加料金を請求することがあります。例えば「通常料金+通常料金の20%」などです。
こうした余計な出費を避けるために、なるべく依頼者が少ない平日日中に片付けをしてもらいます。引っ越しシーズンや年末年始、お盆休みなど、長期休暇が重なるタイミングも外すとさらに安く抑えられます。
日中に仕事を休むのは難しいかもしれませんが、有給などを上手に活用して、お得に片付けをしましょう。
業者を分けずにひとつにまとめる
ゴミ屋敷の片付けをするにあたっては、ゴミを捨てるだけでなく、他の作業も必要です。
害虫の駆除や悪臭の除去、使えそうな不用品の買取など、さまざまなことを行い家をキレイにします。それらを終えてはじめて、落ち着いて遺品整理を行えるのです。
こうした作業をすべて別々の業者に依頼すると、それだけで費用がかかります。そのため、片付けだけでなく不用品の買取やハウスクリーニングまで、まとめて対応している業者に依頼をすることがオススメです。見積もりの手間も省けます。
ゴミ屋敷での遺品整理についてのまとめ
最後に今回のご紹介した内容をもう一度確認しておきます。
◎「遺品整理」とは、故人が生前に使っていた品物を、丁寧に整理していく作業のことをいう。
◎遺品整理の残置物処分手順は以下の通り。
・遺品整理の取り仕切る者を決める
・遺品の形見分けを行い残置物を決める
・残置物の処分方法を決める
・清掃を行う
◎住民不在のゴミ屋敷には以下のリスクがある。
・防災性が低下する
・防犯性が低下する
・ゴミの不法投棄が増える
・近隣への衛生環境の悪化
・風景・景観の悪化
◎ゴミ屋敷の清掃を業者に依頼するメリットは以下の通り。
・短時間で片付く
・不用品の買取も可能
・必要なものを探し出してくれる
◎以下の工夫を行うと、業者への費用が抑えられる。
・自分でできる粗大ゴミやゴミ出しは済ませる
・混雑する曜日や日程を避ける
・業者を分けずにひとつにまとめる
ゴミ屋敷状態は早急に解消しなければならない問題です。遺品整理も進みませんし、何より近隣住民への健康被害などもあります。
故人の形見をスムーズに手元に残せるよう、業者を活用して最優先でゴミの片付けを終わらせることが大切です。